(1) 外資規制
ミャンマーに進出するに当たり、まずは外資規制を確認する必要があります。ミャンマーで実施予定の事業を外資100%で行うことができるか、合弁が必要か、ミャンマー内資会社のみが実施できるかにより進出スキームの選択肢が大きく異なります。
外資規制については、投資法に基づき発布された2017年4月10日 投資規制業種通知(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)において、①「連邦政府のみが実施するものとされている投資活動」9業種、②「外国投資家による実施が許されない投資活動」12業種、③「ミャンマー国民又はミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種、④「関連省庁からの承認を受けることにより許される投資活動」126業種の合計169業種が規定されており、当該規定に基づく制限を受けます。
したがって、事前に上記のいずれかの業種に該当するか否かの確認が必要となります。記載が曖昧な業種もありますが、その場合にはミャンマー投資委員会(MIC)に対して事前確認申請を行うことにより、いずれの業種に該当するかの回答を得ることができます。もっとも、当該回答はMICが法的な保証を付与するものではないため、その後にMICの対応が変更される可能性があることに留意が必要です。
(2)法人設立の選択肢
上記の外資規制をクリアした上で、ミャンマーに法人を設立する方法は主に以下の4つの方法が挙げられます。
①会社法に基づく現地法人又は海外法人
②①+投資法に基づくエンドースメントの取得
③①+投資法に基づくMIC許可の取得
④①+経済特区法に基づく投資許可の取得
多くの日系企業は、①の方法に基づき進出しています。②乃至④の方法は、製造業や不動産開発業など、土地を長期で使用する必要性の高い業種が主です。
上記の①又は②のいずれを選択するかを検討する際の考慮要素としては、主に(a)投資法の恩恵を受ける必要性、(b)手続きに要する時間及び手続的負担、(c)初期投資額を挙げることができます。
(a)投資法の恩恵を受ける必要性に関して、投資法では、優遇措置として、法人税の一定期間の免税などの租税減免措置の恩典や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに、10年の延長を2回行うことができる。)等が存在します。そのため、製造業等においては長期の土地賃借が必要であるため、投資法の恩恵を受ける必要性が高いと言えます。ただし、租税減免措置については、所得税の免税は、2017年4月1日に発布された投資促進分野通知(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)で定める投資促進分野に該当する投資に対してのみ付与され、複数の基準がありますが、そのうちの1つの基準として300,000ドルを超える額の追加資金の支出が必要となります。
(b)手続きに要する時間に関して、②の場合には、①の場合と異なり、会社法に基づく営業許可に加え、投資法に基づくエンドースメントを取得する必要がある。そのため、②の場合には、必要書類が増加し、かつ、一般に投資法に基づくエンドースメントは会社法に基づく営業許可以上に取得までに時間を要します。
(c)初期投資額に関して、投資法上は、最低資本金が規定されていません。しかし、租税優遇措置を享受するためには、300,000ドルを超える額が必要となります。他方、会社法に基づく会社の最低資本金額は存在せず、1チャットの資本金でも設立可能です。そのため、②の場合には、①の場合よりも多額の初期投資が必要となります。
③については、以下のいずれかの場合のみMIC許可を取得する必要があります。
(i)国家の戦略上重要な事業 (a)通信、技術、運輸インフラ、エネルギーインフラ、都市開発インフラ、採掘又は天然資源、農業、市街地、メディアの各セクターかつUSD2,000万以上の投資 (b)当局からのコンセッション等による案件かつUSD2,000万以上の投資 (c)国境紛争・紛争影響地帯かつUSD100万以上の投資 (d)国境をまたぐ投資かつUSD100万以上の投資 (e)1,000エーカー超の土地を占有又は利用する農業関連投資 (f)100エーカー超の土地を占有又は利用する非農業関連投資 (ii)一定の資本金額を超える事業 (a)予想される投資額がUSD1億を超える投資 (iii)環境及び地域社会に深刻な影響を与える可能性のある事業 (a)環境影響評価が必要となる事業 (b)環境保護法により保護地域又は生態系保全地域に指定されている地域への投資 (iv)国有地又は建物を利用する事業 (v)別途政府により投資許可が必要とされる事業 |
④の場合、手厚い租税減免措置や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに25年の延長を行うことができる。)が認められます。しかし、経済特区法は経済特区に指定されたエリアでの会社設立のみに適用され、現時点においては、ティラワ、ダウェイ、チャオピューの3つのエリアが経済特区として指定されているものの、ティラワのみが整備済みの現実的な進出候補地であり、ダウェイ及びチャオピューはいずれも整備は完了しておらず、実際に選択肢となり得るには時間を要します。ティラワには約50社の日系企業が進出しています。