「仲裁(Arbitration)」とは、当事者が裁判所以外の第三者である仲裁人を選び、その仲裁人による紛争の最終的な解決を付託する手続です。
仲裁は、国際的なビジネス紛争の解決手段として、国際取引ではよく紛争解決方法として規定されているものの、日系企業では実際に利用する企業は多くありません。
アジアでは、シンガポール国際仲裁センター(SIAC:Singapore International Arbitration Centre)や香港が一般的ですが、マレーシアも力を入れており、日本も近年は施設を開設するなど力を入れています。
仲裁のメリットとしてよく挙げられるのは、①ニューヨーク条約の加盟国間で執行可能であること、②原則として上訴がないため迅速に解決できること、③言語を英語と規定していれば、英語の書面について翻訳が不要であること、④非公開であるため秘匿性の高い請求内容については公開しないまま紛争を解決できることなどが挙げられます。
他方、一概には言えない点として、紛争について判断する仲裁人は一般的には当該紛争の分野の専門家を選任するため、専門知識を有する点はメリットですが、他方、裁判官ではなく、過去の判断も非公開となっていることがあるため予測可能性が低い点がデメリットです。
また、費用について仲裁の方が裁判よりコストが安いと述べているものもありますが、仲裁の場合、裁判と異なり、仲裁人に対する費用も支払う必要があります。そのため、個人的には少なくとも一審で終わる場合には裁判よりも仲裁の方が高額であり、少なくとも数千万円は要するため、低額の案件には向かないと思われます。
さらに、新興国は汚職などの観点から公正性が担保されないことから仲裁を選択する場合もあります。
これまでの経験に基づく私の考えとしては、当該契約において、自社が原告側になる可能性が高いのか、それとも被告側になる可能性が高いのかを考慮して決める必要があります。例えば、日系企業が日本の裁判による紛争解決を定めることが常に有利なのかというと、原告になる可能性が高い場合には裁判で勝つことが目的ではなく、実際に執行できるのかという観点が重要であり、その観点からは相手方の資産のある国の裁判によるのが一番実効性が高いことが多いです。というのも、仲裁はニューヨーク条約があるとは言われるものの、実際には執行を行うには裁判所の承認が必要であり、その手続きは国によって大きく異なり、ミャンマーでは事実上裁判手続きを最初から行う必要があり、事前に仲裁判断を得ている意味が乏しかったりします。
仲裁や裁判の対応も可能ですので、何かありましたらお問合せ下さい。