日本と異なり、解雇理由及び手続きに関する法令上の明確な規制は存在しません。また、COVID-19を理由とする特別な対応や整理解雇も存在しません。したがって、一般的な解雇規制について、解雇手当を支払う場合と不要な場合に分けてご説明します。
①解雇手当を支払う場合
実務上、合理的理由が必要とされていますが、その理由について明確な規定や裁判例も特に存在しません。手続きとしては、1か月前の通知が必要であり、かつ、労働者の勤続期間に応じて以下の解雇手当を支払う必要があります。
(a)勤続期間が6か月以上1年未満の場合、0.5か月分の給与の支払い
(b)勤続期間が1年以上2年未満の場合、1か月分の給与の支払い
(c)勤続期間が2年以上3年未満の場合、1.5か月分の給与の支払い
(d)勤続期間が3年以上4年未満の場合、3か月分の給与の支払い
(e)勤続期間が4年以上6年未満の場合、4か月分の給与の支払い
(f)勤続期間が6年以上8年未満の場合、5か月分の給与の支払い
(g)勤続期間が8年以上10年未満の場合、6か月分の給与の支払い
(h)勤続期間が10年以上20年未満の場合、8か月分の給与の支払い
(i)勤続期間が20年以上25年未満の場合、10か月分の給与の支払い
(j)勤続期間が25年以上の場合、13か月分の給与の支払い
②解雇手当が不要な場合
解雇手当が不要な場合について、刑事罰に該当する行為を行うような非常に悪質な場合には直ちに懲戒解雇が可能です。
他方、懲戒解雇に該当する程悪質でない場合には、通常解雇となります。
通常解雇の手続きについて、法令上の規定はないものの、労働・入国管理・人口省が出しているモデル雇用契約書第15条(b)(ii)において、「雇用契約の規則に違反した従業員に対して、1 度目は口頭での警告、2 度目は書面による警告がなされる。3 度目は、通常の規定違反に関する誓約書に署名を命じられることとなる。3 度目の警告から、12 か月以内に、労働者が通常の違反を再度犯した場合、使用者は、当該労働者との契約を、解雇手当を与えることなく解除できる。」と規定されています。したがって、4回目の違反で漸く解雇できることから、非常に時間がかかる手続きとなっております。