【日本の汚職に関する法規制の概要】

(1) 国内の賄賂罪

① 定義

日本では、賄賂の罪について、刑法で収賄罪(刑法第197条~第197条の4)と贈賄罪(刑法第198条)が規定されています。収賄罪は、賄賂を受け取る罪で、主体は公務員(公務員になろうとする者や公務員とみなされる者を含む)です。贈賄罪は、賄賂を贈る罪で、賄賂を贈って便宜を図ってもらう人であれば、民間人でも主体になり得ます。

② 賄賂罪が成立する要件

刑法第197条1項前段に「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」と規定されており、賄賂を受け取らなくても、要求や約束をしただけでも収賄罪が成立します。また、賄賂は金品に限られず、入学のあっせんや飲食の提供など一切の利益が含まれます。賄賂と社交儀礼としての贈与の区別について、私生活において、子供の面倒をみてもらったお礼に、公務員の友人にコーヒーをごちそうするといった行為は、通常「賄賂」にあたりません。

③ 罰則規定

賄賂罪が成立した場合、単純な収賄罪の刑罰は「5年以下の懲役」ですが、不正行為をした場合には、加重収賄罪として「1年以上20年以下の懲役」が法定刑になります。賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者について、刑法198条(贈賄罪)は3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が法定刑として定められています。

④ その他の規制

会社法第967条では取締役等の贈収賄罪について規定しています。同条1項は取締役等の収賄罪で、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」が定められ、同条2項では、取締役等に利益を供与し、又はその申込みもしくは約束をした者について、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」を定めています。さらに、取締役等が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を与えたときは、取締役等の特別背任罪にあたり、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」の刑が定められています(同法960条)。役員等の身分がない一般の社員であっても、会社に対して損害を発生させたことを理由に、刑法247条が定める背任罪が成立することがありますので注意が必要です。

(2) 外国公務員贈賄罪

汚職・腐敗は、持続可能な開発にとって大きな障害となり、貧困地域に悪影響を及ぼし、社会の構造を腐食するということから、汚職・腐敗防止は、国際社会にとって重要な課題となっており、国際的な法規制の枠組みのなかで取り組みが進められています。日本は、OECDの国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約を国内で実施するため、不正競争防止法に外国公務員贈賄罪を規定しています。

① 定義

不正競争防止法第18条は「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない」と規定しています。「外国公務員等」とは、国や地方自治体の公務員のみならず、公的な企業の事務に従事する者や、公的国際機関の公務に従事する者なども含まれます。また、現地のエージェントを介して贈賄することも禁止されています。

② 罰則規定

罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又はこれの併科、法人両罰は3憶円以下の罰金と規定されています。外国公務員等への贈賄は、日本の不正競争防止法違反として罰せられるだけでなく、日本以外の国の法律で処罰される可能性もあります。

(3) 海外の法令の域外適用

米国は、米国の企業等が、米国以外の公務員等に対して賄賂を行うことを禁止する「海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practice Act (FCPA)」を贈賄行為の一部が米国内で行われた場合にも適用しており、日本企業も適用対象となります。2011年に制定された英国の「贈収賄禁止法(Bribery Act)」は、公務員等に限られず民間企業同士の取引も規制対象になるなど適用範囲が広く、日本企業にも域外適用される可能性がありますので、留意すべき法令です。

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