【日本の会社法の株主総会に関連する法規制の概要】

(1) 株主総会の権限

① 取締役会を置いていない場合株主総会は、「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と定められています(会社法295条)。

② 取締役会を置いている場合株主総会は、法定事項(取締役や監査役の選任や解任など重要な人事、定款の変更や会社合併など組織の形態、剰余金の配当や役員報酬など株主の利益等)及び定款で定めた事項について決議をすることができます(会社法295条2項)。

(3) 株主総会の種類

① 定時株主総会毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが定められています(会社法296条)。定款に定めがあれば原則その時期内に開催することになりますが、法務省が公表した2020年2月28日付「定時株主総会の開催について」によれば、新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるとされています。

② 臨時株主総会会社の合併や分割、株式交換など株主総会で決議されるべき重大なことが発生した際に臨時に行われるもので、時期や回数などに制限はありません。

(4) 株主総会の招集

① 招集の決定及び招集権者株主総会を招集するためには、日時・場所や目的、欠席株主の議決権の行使等について決定し(会社法298条)、取締役が招集します(会社法296条3項)。なお、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヶ月以上前から保有している株主(公開会社でない株式会社の場合は、議決権保有期間の要件なし)は、株主総会の目的と招集の理由を示した上で、株主総会の招集を請求することができます。また、請求したにも関わらず招集手続きが取られない場合には、裁判所の許可を得たうえで株主総会を招集することができます(会社法297条)。

② 招集の通知株主総会の招集は、書面又は(株主の承諾がある場合)電磁的方法により、株主総会の日の2週間前まで(公開会社でない場合は1週間前まで)に、通知しなければなりません。公開会社でない株式会社で、取締役会設置会社でない場合は、定款で1週間以下の期間を定めることもできます(会社法299条)。なお、経済産業省及び法務省による令和2年4月2日付「株主総会運営に係るQ&A」において、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、出席を控えるよう呼びかけることは、株主の健康に配慮した措置であるとされ、その際には、併せて書面や電磁的方法による事前の議決権行使の方法を案内することが望ましいとされています。

(5) 株主総会の決議

① 普通決議役員の報酬や取締役・監査役の選任など、法律や定款に特別な定めがない事項について決議します。議決を行うためには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席することが必要で、出席者の議決権の過半数により決議されます(会社法309条)。

② 特別決議会社法で定められた、より重要とみなされる事項を決議するためのものです。定款の変更、事業の譲渡、解散、組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、資本金の減少などが挙げられます。特別決議を議決するためには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席することが必要で、出席者の議決権の賛成が3分の2以上で決議されます(会社法309条2項)。

③ 特殊決議

(a) 会社法309条3項による特殊決議全株式を「譲渡制限株式」とする定款の変更、吸収合併契約の承認、新設合併契約の承認については特殊決議が行われ、議決を行うためには、議決権を行使することができる株主のうち過半数の出席が必要で、議決権の3分の2以上の賛成をもって決議されます。

(b) 会社法309条4項による特殊決議「配当、分配、議決権につき株主ごとに異なる取り扱い」を定款で定める場合で、議決を行うためには総株主の半数以上の出席が必要で、議決権の4分の3以上の賛成をもって決議されます。

(6) 議事録の作成と保存株主総会の議事録の作成が義務付けられています(会社法318条1項、会社法施行規則72条)。

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