メキシコへの食品の輸入に関して参照すべき法令等は、関税法(Ley Aduanera)、関税法規則(Reglamento de la Ley Aduanera)、貿易法(Ley de Comercio Exterior)、貿易法規則(Reglas Generales de Comercio Exterior)、保健一般法(Ley General de Salud)、輸出入一般税法(Ley de los Impuestos Generales de Importación y de Exportación)、その他各種税法、食品の安全衛生基準や包装、表示に係る基準等を定めるNOM(Norma Oficial Mexicana/公式メキシコ規格)などが挙げられます。また、関連する行政機関も、国税庁(Sservicio de Administración Tributaria: SAT)、経済省(Secretaría de Economía)、農業・農村開発省(Secretaría de Agricultura y Desarrollo Rural)、環境資源省(Secretaría de Medio Ambiente y Recursos Naturales)、保健省(Secretaría de Salud)などがあります。通関手続きについては、貿易デジタル窓口(Ventanilla Única de Comercio Exterior Mexicano/VUCEM)が設けられ、ペーパーレス化が図られており、当該窓口を通じて行わなければなりません。一口に食品と言っても、多岐にわたることから、本稿では清酒(最終消費者向けにパッケージングされた商品でアルコール度数20%未満)を輸入する場合を例に紹介します。なお、アルコール飲料の名称、理化学的特性、商業情報及び試験方法を定める基準(NOM-199-SCFI-2017)によると、清酒(SAKE)は、米の発酵によって得られるアルコール飲料でアルコール度数2%~20%のもととされており、また、製品・サービスの衛生管理規則によると、その多くがアルコール含有量中度(6.1%~20%)のアルコール飲料(contenido alcohólico medio)に分類されると考えられます。
まず、メキシコ国内で流通する食品等はメキシコが定める衛生、包装、表示等の基準を満たす必要があり、表示にはスペイン語を使用しなければなりません。例えば、表示については、アルコール飲料の衛生基準及び衛生的・商業的表示基準(NOM-142-SSA1/SCFI-2014)に従い、商品に、商品の名称、輸入事業者名とその住所、内容量、原産国(”Producto de ____”, “Hecho en ______”, “Manufacturado en _____”, “Fabricado en _____”など)、ロット番号(”LOTE”, “Lot”, “L”, “Lote”, “lote”, “lot”, “l”, “lt”, “LT”, “LOT”などを付す)、消費期限及び保存に必要な条件(例:「開封したら冷蔵してください」)、アルコール度数(20℃での含有量、”% Alc. Vol.”, “% Alc Vol”,”% alc. vol.”, “% alc vol.”のいずれかを用いる)、成分(アレルゲンを含み、定量順に記す)、警告文(”EL ABUSO EN EL CONSUMO DE ESTE PRODUCTO ES NOCIVO PARA LA SALUD”(本商品の飲み過ぎは健康に害を及ぼす)の表示、容器の大きさに応じた文字の大きさの指定あり)、低カロリーである旨の表示(オリジナルのカロリーと比較して24%以上カロリーが低い場合に可)、エネルギー含有量、18歳未満の飲酒の禁止、妊娠中の飲酒の禁止、飲酒後の運転の禁止を示す規定のマークを必ず表示しなければなりません。その他、消費者に誤解、誤認を与えない範囲において、商品の歴史や商品を用いたレシピ、キャッチコピーなどを表示でき、そのような情報はスペイン語である必要はありません。表示等については、指定認証機関にあらかじめそのサンプルを送付して適合証明書を発行してもらい、その証明書を輸入申告書に添付する方法や指定認証機関として認定されている保税倉庫との契約によって、当該倉庫業者が貼付する方法などにより基準に準拠することを示さなければなりません。
輸入にあたっては、輸入者は、商品の発送に先立ち輸入事業者として国税庁への登録を行わなければなりません。この登録には、輸入事業者の納税者番号(RFC)や電子署名(e.firma)、税務住所が必要となり、税の滞納がないことが条件となります。また、アルコール飲料の輸入には、特別税(Impuesto Especial sobre Producción y Servicios:IEPS)も課されますので、同時に酒類納税者登録も必要となります。この登録を行うことにより、IEPS法により求められるアルコール飲料の容器に貼付しなければならないシールの発行を申請することが可能となります。なお、このシールは、商品がメキシコ国内に入る前、つまり保税倉庫等において、貼付しなければなりません。また、VUCEMへの利用者登録も必要となります。
輸入に際しては、通関時に提示が必要となる輸入商品の価格を証明する書類(インボイス等)、船荷証券(B/L)や航空貨物運送状(AWB)、非関税輸入規制を遵守していることを証明する書類(製造者から提供される衛生登録や分析に関する証明書、前述の適合証明書など)、原産地証明書(必要な場合)といった書類を事前にVUCEMを通じて送信しなければなりません。商品到着後、通関手続き、関税の支払いを経て商品はメキシコ国内に搬入されることとなります。
本記事の詳細は当事務所へお問い合わせ下さい。