【マレーシアの汚職に関する法規制の概要】

(1) マレーシアにおける汚職に関する法規制の概要

① 概要マレーシアにおいては刑法(Penal Code)が公務員等の収賄罪について定めているほか、2009年マレーシア汚職防止委員会法(Malaysia Anti-Corruption Commission Act 2009)が民間人・民間企業への贈賄を含めた贈収賄全体について広く規制しています。

② 2009年マレーシア汚職防止委員会法における贈収賄罪同法は、A)ある者が何らかの事項について何らかの行為を行い又は行わないこと、若しくはB)公務員がその所属する公的機関にかかわりのある業務について何らかの行為を行い又は行わないことの誘因又は見返りとして、汚職の意図をもって(corruptly)、a)自分自身又は他の人のために、利益(gratification)を要求した、受領した又は受領の同意をした、若しくはb)自分自身又は他の人のために、何人かに利益(gratification)を与えた、与える約束又は申出をした場合には、罰則の適用がある旨を規定しています。また、同法は、このような一般的・包括的な規定の他に、公務員(officer of a public body)に対する贈賄罪について個別的な禁止規定が置かれています。

③ 2009年マレーシア汚職防止委員会法における企業の責任2020年6月1日から、2018年の改正により追加された17a条が施行されています。この17a条は、会社を含む商業団体の関係者が汚職行為を行った場合における当該商業団体及びその取締役等の刑事責任について定めるものであり、今まで曖昧であった法人の責任を明確に定めるものです。

(a) 同条の適用対象となる商業団体17a条の対象となる商業団体は、以下のとおりとされています。

• 2016年会社法(Companies Act 2016)に基づき設立されマレーシア又は他国で事業を行う会社• 他国で設立されマレーシアで事業又はその一部を行う会社• マレーシア又は他国で事業を行う2012年有限責任パートナーシップ法(Limited Liability Partnerships Act 2012)に基づく有限責任パートナーシップ(有限責任組合)• 他国で結成されマレーシアで事業又はその一部を行うパートナーシップ(組合) 

(b) 適用要件

(ア) 商業団体の関係者商業団体の関係者とは、商業団体の取締役、共同経営者又は従業員、若しくは商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者を意味するものとされています。ある者が商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者に該当するか否かは、その者と商業団体との関係性だけではなく、関連する全ての状況を考慮して決せられます。(イ) 汚職行為商業団体の関係者が以下の意図をもって賄賂の提供の合意、約束、申出をした場合、その商業団体も違反をしたものとして扱われます。• 商業団体のために事業を獲得する又は維持すること• 商業団体のために事業を遂行する上での便益を獲得する又は維持することもっとも、商業団体は、商業団体の関係者のそのような行為を防ぐための適切な手続を備えていたことを証明することで、処罰を免れうるものとされています。この適切な手続の詳細については、マレーシア汚職防止委員会がガイドラインを発行しています。

(c) 罰則違反の対象となった賄賂の額又は価値の10倍以上の罰金(違反の対象となった賄賂が金銭的な性質を有するか金銭的に評価できるものの場合)又は100万リンギの罰金のいずれか高い方、又は20年を超えない懲役、若しくはその両方が科されるものとされています。

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