バングラデシュの汚職は、トランスペアレンシー・インターナショナル(腐敗・汚職に対して取り組むNGO)が公表している腐敗認識数によると180か国中146位と低く、深刻な問題となっています。汚職撲滅を担当する中立的な独立機関として、汚職防止委員会(Anti-Corruption Committee: ACC)が2004年に設立されましたが、政治的な介入を受けて、その機能を十分に果たせていないのが実情です。
(1) 国際的な法的及び制度的な枠組み
バングラデシュは、2007年に「腐敗の防止に関する国連条約」に加盟したほか、2011年には「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に署名しています。
(2) 国内の法的枠組み
汚職を規制する主要な法律として、刑法、汚職防止法(Prevention of Corruption Act 1947)及びマネーロンダリング防止法(Prevention of Money Laundering Act, 2012)が挙げられ、汚職未遂、恐喝、能動的及び受動的賄賂、外国公務員等の贈収賄等を犯罪と規定しています。刑法第161条に「公務員である又は公務員であるとみられる者で、公務の実施又は実施を控えること、公務を執行するうえで、特定の者に有利又は不利に見せる又は見せることを控えること、役務又は危害を与える又は与えようとすることに対する報酬として、自身又は他の者に対する、適法な報酬以外の便益を受領、取得、受領に合意、取得に合意した者は、3年以下の懲役もしくは罰金又はその両方に処せられる」と規定されています。
汚職防止法では、「公務員」について刑法の定義に加え、政府により設立された企業や団体、地方自治体、法律に基づいて設立された企業や組織の長、職員、その他関係者も対象に含めています(汚職防止法第2条)。収賄に加えて犯罪的違反行為をした場合は、7年以下の懲役若しくは罰金又はその併科と規定されています(汚職防止法第5条2項)。
公務員規則(Government Servants (Conduct) Rules)の第5条4項には「政府の秘書官又は同等の職員は、外国政府の機関又は高官若しくはより高位の者から、バングラデシュ国内外で500タカ(現在のレートで620円程度)以下の価値の贈り物を受け取ることができる」と規定されていますが、同法が施行されたのは1979年であり、その後、具体的な金額は示されていません。
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