【マレーシアの会社法の株主総会に関連する法規制の概要】

マレーシアにおける会社の運用は2016年会社法(Companies Act 2016)によって規律されています。同法は、株主総会の運用について、以下のような規定を置いています。

(1)株主総会の招集

株主総会の招集権者は、取締役会又は株主とされています。株主については、発行済み株式の10%以上を有する株主が招集権を有しますが、定款で10%未満の株主に招集権を付与することも可能です。また、10%以上の議決権を保有する株主は、取締役に対し株主総会の招集を請求することができます。

(2)招集通知 

招集通知は、ハードコピー又は電子的方式若しくはそれらを併用する形で文書により行う旨が規定されています。 

(3)議長

定款に議長に関する規定を置いていない場合、取締役会長(the chairman of the Board)が株主総会の議長を務めることとされています。取締役会長が存在しない場合、株主総会開催のために指定された日時から15分以内に議長となるべき人物が現れない場合又は当該人物が議長を務める意思を有さない場合、株主総会の出席者が出席者の中から議長を選任することができます。

(4)定足数 

株主総会を進めるために必要な定足数は、以下のとおりです。 

①株主が1名のみの場合、当該株主の出席により定足数を充足する 

②①以外の場合、2名の株主又はその代理人の出席により定足数を充足するが、定款でより多い人数を定めた場合はその人数 出席者が、総会開始の時点で定足数に満たない場合、株主総会を進めることはできません。また、定款で別途規定する場合を除き、指定された開始時刻から30分以内に定足数が充足されない場合、翌週の同一曜日の、同一の時刻、場所(又は取締役が別途決定した場合は当該決定された日時、場所)に延期されるのが原則ですが、株主の請求により開催された株主総会については取消しとなります。

(5)普通決議と特別決議  

ア 普通決議(Ordinary resolution) 普通決議は、議決権を有する株主の過半数の賛成により可決されます。決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を有する株主(株主の代理人も含む)の単純過半数の賛成により、決議が投票により行われる場合、投票された議決権総数(委任状による投票を含みます)の半数を超える票の賛成により、普通決議は可決されます。 

イ 特別決議(Special resolution) 特別決議は、議決権を有する株主の75%が賛成することにより可決されます。決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を有する株主(株主の代理人も含む)の75%以上の賛成により、決議が投票により行われる場合、投票された議決権総数(委任状による投票を含みます)の75%を超える票の賛成により、特別決議は可決されます。定款の変更や減資等については、特別決議により決議されることが要求されます。 

ウ 定款による規定 決議の種類が条文上定められていない場合、当該事項についての決議は普通決議で足ります。もっとも、定款に定めを置くことにより一定の事項を特別決議事項とすることができるため、自身が少数株主の場合には一定の重要な事項について特別決議を要求する旨の定款の定めを置くよう要求することが考えられます。

(6)採決 

採決が挙手により行われる場合には、1人が1票を有するものとして扱われ、採決が投票により行われる場合には、保有株式1株につき1票を有するものとして扱われます。 2016年会社法上、採決は原則として挙手による旨規定しています。但し、以下の者が採決の結果を宣言する前に、投票による採決を請求した場合は投票による採決を行う必要があります。 

①議長 

②出席した株主又は代理人のうち3名以上の者 

③出席した株主又は代理人のうち議決権割合が総議決権の10%以上となる者 

④総議決権数の10%以上を有する株主 また、BMLR(Bursa Malaysia Listing Requirements)は、上場会社は全ての採決を投票により行わなければならないとしています。

(7)定期総会 

ア 非公開会社の場合  2016年会社法の下では、非公開会社は定期総会を開催する義務を負わないとされています。 

イ 公開会社の場合  公開会社は、定期的に株主総会を開催する必要があります。新しく設立された公開会社については、設立後18か月以内に株主総会を開催する必要があります。その後は、1年に1回、定期総会を開催しなければなりません。開催時期は、会計年度終了時から6ヶ月以内であり、かつ②最後に開催された定期総会から15カ月以内である必要があります。但し、会社はSSM(会社委員会)に開催時期の延期を申請することができます。

(8)書面による決議 同法は、株主の決議を書面で行うことを認めていますが、書面による決議は非公開会社(private company)のみが利用することができ、また、取締役の解任及び監査役の解任に用いることはできないものとされています。 書面による決議は、株主への回付の開始後28日以内に議決される必要があり、同期限を経過してなされた署名は効力を有しません。但し、上記期限は定款で変更することができます。

(9)決議の記録 

ア 議事録等の保管  会社は、株主総会に関して以下の記録を保管する必要があります。  ①株主総会以外で行われた、株主による全ての決議(書面による決議を含む)  ②株主総会の議事録  ③同法344条に従い会社に提供された事項 上記の記録は、決議がなされた日又は株主総会の開催日から起算して7年間保管されなければなりません。マレーシアでは、株主総会に関する記録は会社秘書役が保管することが実務上通常となっています。 

イ 記録の閲覧株主は、保管されている議事録等について、会社のRegistered Office又は会社から通知された特定の場所において、無償で閲覧する権限を有します。また、株主は、会社に請求したときから14日以内に、議事録等の写しを取得することができます。

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