【日本の産休・育休に関する法制度の概要】

(1) 産休(産前産後休業)

① 産休期間

労働基準法では、母体の保護の観点から必要な産休を定めています。使用者は、6週間(双子以上の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできません(第65条(1))。また、使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させることができません(第65条(2))。産後休業は、本人が就業を希望しても与えられなければならない強制休業ですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせても差し支えありません(第65条(2但書))。また、産前産後休業期間中及びその後30日間は懲戒理由であっても解雇することはできません(第19条)。

② 労働時間

妊産婦(妊娠中の女性および産後一年を経過しない女性)については、就業時間の制限に関する規定があります。妊産婦から請求があった場合は変形労働時間制であっても週40時間、1日8時間以上の労働をさせてはなりません(第66条(1))。また、36協定を締結していても、時間外労働、休日労働、深夜労働が禁止されています(第66条(2)(3))。使用者は、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません(第65条(3))。

③ 賃金の支払い

産休中の賃金の支払いについては労働基準法の規定はありませんが、産休中の給与が支払われない又は給与の満額が支払われない場合は、健康保険から賃金の3分の2相当額の出産手当金が支給されます(健康保険法第102条)。また、産休中は、事業主の年金事務所への申出により、厚生年金・健康保険料が本人負担分及び事業者負担分がともに免除されます。

(2) 育休(育児休業)

① 育休期間

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」といいます)」により、1歳に満たない子供を養育する男女労働者は、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できる旨が定められています(育介法第5条(1))(一定の場合は2年まで延長が可能。後述)。家族などで、事実上、子供の世話が可能な者がいても、関係なく取得することができます。有期契約労働者が育児休業を取得できる要件(育介法第5条(1但書))は以下の通りです。

a. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されること

b. 子供が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳)に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

使用者は、取得の要件を満たす労働者から請求があった場合、育児休業を拒むことはできません(育介法第6条)。また、使用者は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育介法第10条)。 子供が1歳に到達した日において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、以下のいずれかに該当する場合は、1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができます(育介法第5条(3)、施行規則第6条)(有期契約労働者でその配偶者で子供の1歳到達日において育児休業をしている場合は、上記a、bのいずれにも該当し、かつ下記a、bのいずれにも該当していることが必要となります。)。さらに、1歳6か月到達時点において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、これらの事情がある場合は、再度申請することにより2歳到達日まで育児休業を延長することができます(育介法第5条(4)、施行規則第6条の2)。

a. 保育所に入所を希望し、申込みをしているが、子供が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合

b. 子の養育を行っている子の親である配偶者で、子供が1歳に達する日後の期間について、常態として当該子供の養育を行う予定であった者が、死亡や健康上の理由により子供の養育が困難になった場合等、一定の事情に該当する場合

育児休業は原則として同一の子について労働者一人につき1回限り取得することができますが(育介法第5条(2))、産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合は、再度父親が育児休業を取得することができるようになりました(育介法第5条(2括弧書))。

② 賃金の支払い 

雇用保険から「育児休業給付」が支給されます(雇用保険法第61条の7(1))。

③ その他の関連制度

3歳までの子供を養育している労働者が利用できる制度として、短時間勤務制度の義務化(育介法第23条)、所定外労働の免除の義務化(育介法第16条の8)、子供の看護休暇(育介法第16条の2)の拡充などの制度があります。働き方改革、少子化対策、男性の育児参加の推進などの政府による取り組みや社会の変化に応じて、関連法令の改正が進んでおり、改正に応じた、就業規則の見直しや労働環境の改善が求められます。法令の規定を上回る制度や独自の子育て支援制度を設けている企業も増えており、優秀な人材の確保のために、重要な取り組みのひとつと言えます。