【マレーシアの産休・育休に関する法制度の概要】

(1)出産休暇

 マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を認めています。 産休・育休という区分はなく、この60日間の出産休暇を産前・産後にどのように振り分けるかは各労働者に委ねられていますが、原則として、出産の30日よりも前から取り始めることはできず出産後から取り始めることもできないものとされています。

(2)出産手当

 また雇用法は、 

①出産の直前9カ月の間に合計90日以上その雇用主に雇用されており、  

②出産の直前4カ月のいずれかの時点でその雇用主に雇用されていたこと

を条件として、出産休暇の間、女性労働者は雇用主から出産手当を受け取ることができる旨を定めています。出産手当の額は、1日の通常の賃金額又は人的資源大臣が定める計算方法で計算した額のうち有利な方の金額とされています。ただし、その出産の時点で既に5人以上の生存する子どもを有する女性労働者は、出産手当を受給する権利を有しません。 また、女性労働者は出産予定日の直前60日の間にその雇用主に出産予定日及び出産休暇を開始しようとする日を通知しなければならず、通知を行わないままそのような休暇を開始したときは、雇用主は通知がなされるまで女性労働者に対する出産手当の支払いを留保することができます。 なお、退職を控えた女性労働者であってその退職の日から4カ月以内に出産することを知っているかそう信じる理由がある者は退職の前にその雇用主に対して妊娠を通知しなければならず、これを行なわなかった場合には女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を与えられないものとされています。もっとも、通知を行わなかったことに合理的な理由がある場合等にはこの限りではありません。

(3)解雇規制 雇用主は、女性労働者が出産休暇を取得する権利を有する期間中にその女性労働者の雇用契約を終了することはできません(廃業を理由とする終了の場合を除く)。また、女性労働者が妊娠・出産に起因する疾病により業務に適さない旨の登録医療従事者の診断を得て期間満了後も引き続き欠勤をするときは、期間満了後の欠勤が90日間を超えるまでは、その雇用主は当該女性労働者を解雇し、又は解雇の予告を行なうことができないとされています。

(4)適用範囲 マレーシアの雇用法は本来賃金が一定額(月額RM2,000)以下の労働者等に対してのみ適用されるものとされていますが、上記(1)から(3)で述べた規制は所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての女性労働者に適用されます。