【メキシコの雇用契約及び就業規則の概要と法的留意点】

(1) 雇用契約

① 雇用契約の種類

無期雇用契約のほか、業務の性質のため、あるいは、一時的に他の労働者の代替のため(その原因に限定はありませんが、産休や休職に入った労働者の代わりに雇用する場合などにも用いることができます。)、有期雇用契約を締結することもできます。また、季節的な活動や、週、月、年の全期間にわたってサービスの提供を必要としない活動の場合には、労務提供期間を限定することも可能です。この条件下での労働者は無期雇用契約の下で雇用されている労働者と同じ権利を有することになります。有期雇用とする場合はいずれの場合でも、その旨を書面にて合意しなければならず、これがない場合は無期雇用契約とみなされます。

② 書面化の要否

労働条件は、適用される労働協約がない場合には、書面に記載することが義務付けられています。そのため、一般的には雇用契約書を作成することになります。雇用契約書は労働者用、使用者用の2部を作成する必要があります。

③ 雇用条件記載書面(雇用契約書)の記載事項連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)は、 (i)労働者及び使用者の氏名、国籍、性別、婚姻の有無、住民登録番号(CURP)、納税者登録番号(RFC)、及び住所、(ii)雇用形態(特定業務、季節的業務、有期又は無期等)や試用期間がある場合の期間、(iii)業務内容、(iv)業務実施場所、(v)1日の就業時間、(vi)給与額及び形態、(vii)給与支払日及び支払場所、(viii)労働者が受ける研修及び訓練等に関する内容、(ix)休業日、休暇など、労働者と雇用主との間で合意したその他の労働条件、(x)労働者の死亡等により当該労働者の給与および手当の支払いを受ける者の指定、を雇用契約などの雇用条件記載書面に記載しなければならないとしています。

また、テレワーク(連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、使用者の事業所以外の場所で労務の提供を行う労働形態)を行う労働者で、労働時間全体の40%超をテレワークの形態で実施する場合、上記の他、労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、その他テレワークに関し当事者が合意する事項も記載が必要となります。

④ 最低給付

使用者は次の最低給付を遵守し、労働者に提供しなければなりません。(i)最低賃金額以上の給与、(ii)法定有給休暇、(iii)少なくとも給与額25%の有給休暇手当、(iv)少なくとも15日分の給与額のボーナス(Aguinaldo)(支給対象年の勤務期間が年の全日とならない場合は、勤務日数に応じた額)(v)利益分配金(PTU)、(vi)社会保障

(2) 就業規則

① 作成義務と効果

連邦労働法では、就業規則の制定は義務付けられてはいません。しかし、就業規則を定めた場合には、使用者と労働者の義務を定めるものとして位置づけられており、就業規則の内容や、使用者が就業規則に違反した場合の罰則などが規定されています。

② 記載しなければならない事項

就業規則を制定する場合、次の事項を含める必要があります。(i)出退勤時間と食事時間を含む休憩時間、(ii)就業開始および終了の時刻と場所、(iii)就業場所や業務に使用する機械、工具などを清掃する日時、(iv)給与日および給与の支払場所、(v)労働者のために設けられた席等の使用規則、(vi)労災予防のための規則や応急措置の手順、(vii)未成年が就業してはならない危険かつ有害な業務および妊娠中の労働者が受けるべき保護、(viii)労働者が受けるべき健康診断の方法と時期、(ix)労働者が受けるべき許可等(x)懲戒とその適用手順、(xi)その他企業活動に鑑みて、安全で秩序ある職場の実現のために必要かつ適切な規則また、テレワークを採用する場合であって、労働協約を締結していない使用者は、就業規則において、テレワーク労働者と連絡を確保する仕組みなどを規定しなければならないとされています。

③ 届出義務

就業規則の制定においては、労働者と使用者の代表者によって構成される委員会によって策定し、両当事者が合意した場合は、署名後8日以内に連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral)に届け出なければなりません。就業規則は連邦労働調停登録センターへの届出の日より有効となり、使用者は労働者に写しを配布し、また事業所内の誰もが閲覧できる場所に掲示する必要があります。

なお、届出先となる連邦労働調停登録センターは2019年5月の改正労働法によって新設された機関であり、同センターによる運用が開始されるまではこれまでの調停仲裁委員会(Junta de Conciliación y Arbitraje)や労働福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)が担うこととなります。同センターは同改正法の施行から2年以内に登録業務を開始することとされており、2020年11月より、カンペチェ州、チアパス州、ドゥランゴ州、メキシコ州、サンルイスポトシ州、タバスコ州、サカテカス州、イダルゴ州(連邦レベルのみ)の8州において開始しています。今後、アグアスカリエンテス、グアナファト、ケレタロを含む13州が第2期として2021年10月に、メキシコシティなど残る11州が第3期として2022年5月に開始される予定です。

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