メキシコの独占禁止法(競争法)は、2014年に施行された経済競争に関する連邦法(Ley Federal de Competencia Económica:以下、競争法)となります。競争法の概要は次の通りです。
(1) 目的及び定義
競争法の目的は、自由な市場へのアクセスと経済競争を促進、保護、保証すること、ならびに独占や独占的慣行、競争や市場の効率的な運営の制限を厳しく罰し、排除することにあります。
(2) 管轄機関
管轄機関は、連邦競争委員会(COFECE: Comisión Federal de Competencia Económica)と連邦電気通信機関(IFETEL: Instituto Federal de Telecomunicaciones)の2つが存在します。
連邦電気通信機関が電気通信及び放送分野を担い、連邦競争委員会がそれ以外の分野を担当しています。
(3) 制限される行為
競争法において、特に重要となる制限される行為は、絶対的独占行為、相対的独占行為や企業結合が挙げられます。
1 絶対的独占行為
絶対的独占行為は、競争事業者間で、提供する商品やサービスの供給や価格を共同で取り決め、それを操作することや、政府が行う調達において事前にそれらを取り決める行為(入札談合)や、これらの行為に関する情報交換を行う行為を指します。絶対的独占行為に該当する行為は違法であり、無効となります。絶対的独占的行為を行った場合、事業者の収入の10%に相当する額の罰金が命じられる可能性があります。
2 相対的独占行為
相対的独占行為は、市場を支配する企業がその力を使用して、他者が参入するのを不適切に防止したり、競合する人を排除したりして、価格の上昇や商品やサービスの供給の減少を招く行為を指します。具体的には、競合していない主体間での流通の制限や、抱合せ販売などの条件を課すこと、特定の他者に対する取引の拒絶、特定の事業者からの商品やサービスの取得を拒否するよう勧誘すること、同等の条件にある異なる買い手や売り手に対して、異なる価格や売買条件を設定すること、不可欠な施設や材料の取引拒否又は制限、マージンスクイーズ(川上における利鞘の縮小のことを指し、一つまたは複数の事業者が提供する必要不可欠な供給物の入手価格と、同事業者が同じ供給物を使って生産し、最終消費者に提供する商品またはサービスの価格との間の、既存のマージンを削減すること)などがあります。相対的独占行為に該当する行為は違法ではありますが、無効とはなりません。ただし、相対的独占行為を行った場合、事業者の収入の8%に相当する額の罰金が科される可能性があります。
3 企業結合
企業結合とは、合併、支配権の取得その他の企業等が競争事業者等と合体する一切の行為と広く定義されており、企業結合が企業再編などグループ企業間で行われる場合といった一部の例外を除き、次の基準を満たす場合に届出を行い事前に承認を得ることとされています。
(a) 対象となる取引の価値がUMA※日額の1800万倍超
(b) UMA日額の1800万倍超の資産又は売上を有する当事会社の資産又は株式の35%以上の取得
(c) UMA日額の840万倍超の資産又は資本金を取得する場合であって、2つ以上の当事会社が単独又は合算でUMA日額4800万倍超の資産又は売上を有すること。
なお、これらの基準に該当しない場合であっても、自主的な通知を行うことが求められています。
管轄機関は、市場環境への影響を評価し、競争や自由な参入を害さないことを確認し、当該企業結合を認可、条件付、または不認可にする権限が与えられています。
※UMAとは、Unidad de Medida y Actualizaciónという、メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する経済的基準単位であり、2021年の日額は89.62ペソです。