(1)主な関連法
不動産に関する法律としては、主なものとして土地法(Land Code B.E.2497)、投資奨励法(Investment Promotion Act B.E.2520)、タイ工業団地法(Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E. 2522)、民商法典(Commercial and Civil Code B.E.2535)及びコンドミニアム法(Condominium Act B.E.2522) などが存在します。
(2)不動産の所有権に関する登記制度など
私人も土地及び建物を所有することができます。民商法典上、「不動産」とは、土地及び建物の定着物または土地と一体のもの、とされています(民商法典100条)。土地と建物は、別々の不動産として、取引することが可能です。しかしながら、登記制度自体は、土地についてのみ存在し、建物についての登記制度は存在しません。つまり、土地については土地局で登記を行い、土地の完全な所有権を証する証書として、権原証書(Title Deed)を発行してもらうことが可能であるものの、建物については登記制度がなく、土地の権原証書のように、所有権を証する証書などの書類は存在しません。もっとも、建物の譲渡は、売買契約を土地局に登記することにより行います。このため、対象となる建物について、過去に登記された売買契約書を土地局で確認することにより、その所有者の確認を行うことが一般的です。また、建物が過去に譲渡されていない場合には、当該建物を建築した際の「建築許可証」が、所有権を証する書類として用いられています。
(3) 外資規制
外国人(タイ国外における法人と、登録資本金のうち外国資本49%を超えるタイで登記された法人を含む)は、原則として土地を所有することができません(土地法第86条)。もっとも、投資奨励法やタイ工業団地法などで、一定の要件を満たす場合には、外国人であっても土地を所有することが認められています。
建物については、外国人も特に制限なく所有することが認められています。しかし、コンドミニアムについては、各ユニットの区分所有権を取得することになり、コンドミニアムの各ユニットについての所有権のみでなく、その建物の敷地を含めた共用部分についても所有権を取得することになるため、外国人が所有できるコンドミニアムの区分所有の割合は、全ての区分の49%まで、と定められています(コンドミニアム法19条Bis)。
(4) 不動産の賃貸借
民商法典上、土地や建物の賃貸借期間は、原則として最長30年とされており、さらに30年の更新を定めることは可能です(民商法典540条)。商業または工業用の不動産については、商工業用不動産賃貸法(Act on Lease Immovable Property for Commercial and Industrial Purposes, B.E.2542)に基づき、一定の条件を充足した場合に、最長50年の賃貸借が可能となりますが、同制度は手続きが煩雑となるためか、実務上はあまり利用されていません。