(1) フランチャイズに対する法的規制
メキシコにはフランチャイズビジネスに対する外資規制は存在しません。そのため、メキシコ人またはメキシコ法人とフランチャイズ契約を締結する、メキシコに現地子会社を設立のうえフランチャイズ契約を締結するといったいずれの方法も採りえます。ただし、後者の場合において、事業自体が外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)上規制を受ける場合には、当該子会社は外国投資法上の許可を要します。
フランチャイズの内容は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial、以下「法」といいます。)やその規則において規制をうけますので、以下でその内容を説明します。
(2) 情報開示
フランチャイザーは、契約締結の少なくとも30日前に、フランチャイジーに対し、自らの会社の状況に関する情報を提供しなければならないとされています。
提供しなければならない情報とは、(i)フランチャイザーの氏名、名称、会社名、住所、国籍、(ii)フランチャイズの説明、(iii)フランチャイザーおよび該当する場合にはマスターフランチャイザーの企業年齢、(iv)フランチャイズに関わる知的財産権、(v)フランチャイジーがフランチャイザーに支払わなければならない金額とその費目、(vi)フランチャイザーがフランチャイジーに提供しなければならない技術援助およびサービスの種類、(vii)フランチャイズを展開する営業地域の定義、(viii)フランチャイジーが第三者にサブフランチャイズを付与する権利、または付与しない権利、および該当する場合には、付与するために満たすべき要件、(ix)フランチャイザーから提供された機密情報に関するフランチャイジーの義務、(x)フランチャイズ契約の締結から派生するフランチャイジーの義務と権利全般です。
これらの情報に真実性がない場合、フランチャイジーは、(i)契約の無効を要求するほか、(ii)適切な情報開示を怠ったことによって生じた損害の支払いを要求することができます。フランチャージ―は、(ii)の損害賠償請求の権利を、契約締結から1年間行使することができます。この期間が経過した後は、フランチャイジーは(i)契約の無効を要求する権利しかありません。
(3) フランチャイズ契約に記載が要求される事項
フランチャイズ契約は書面で行われることが要求されます。法に規定される最低限の記載事項は、以下の通りです。
(i)フランチャイジーが活動を行う地域、(ii)フランチャイジーが契約の目的から派生した活動を行う施設に関する最小規模および特性、ならびにその場所、(iii)在庫管理、マーケティングおよび広告に関する方針、ならびに該当する場合には商品の供給およびサプライヤーとの契約に関する規定、(iv)返済、融資、その他の考慮事項に関する方針、手続、条件、(v)フランチャイジーの利益率または手数料の決定に適用される基準および方法、(vi)フランチャイジーの従業員に対する技術および業務上の研修の特徴、ならびにフランチャイザーが技術支援を行う方法または形態、(vii)フランチャイザーおよびフランチャイジーが担当するサービスの品質、パフォーマンスの監督、報告、評価に関する基準、方法および手順、(viii)当事者が合意した場合のサブフランチャイズに関する条件、(ix)フランチャイズ契約の解除となる事由、(x)フランチャイズ契約に関連する条件を修正し、該当する場合には相互の合意により修正することができる旨。
(4) フランチャイジーの義務
フランチャイジーの義務は、個々のフランチャイズ契約で設定することができます。ただし、法は、契約期間中及び契約期間後も、フランチャイジーに当該フランチャイズ事業に関連し知り得た情報や業務内容などについて秘密保持義務を課しています。
(5) フランチャイザーの権利
フランチャイザーは、契約で定められた内容に従って、管理基準およびフランチャイズイメージを守ることを保証する目的を以てのみ、フランチャイジーの組織および運営に干渉することができます。
フランチャイジーの合併、会社分割、組織変更、定款の変更、会社の持分または株式の譲渡、または担保の設定については、フランチャイズ契約を決定づける要因としてフランチャイジーの特性を変更する場合でも、契約で規定されていない限り、フランチャイザーはいかなる干渉もしないものとされています。
(6) 解約
フランチャイザーとフランチャイジーは、契約が無期限で合意されている場合や、正当な理由がある場合を除き、一方的に契約を解除または取り消すことはできません。フランチャイジーまたはフランチャイザーが契約期間満了前に契約を解除するためには、契約で合意された事由と手続きによる必要があります。
これに違反するフランチャイザーまたはフランチャイジーによる中途解約は、契約で合意された従来の違約金を支払うか、またはそれに代えて、生じた損害および不利益に対する補償を行うものとされています。
(7) 商標権
フランチャイズビジネスを展開するにあたっては、商標登録が重要です。フランチャイザーは、フランチャイジーに対し独自の経営ノウハウや商品を提供しビジネスを許諾することにより対価を得ますので、ブランド力の向上や独占的販売の効果を生むためには、関連する商標をメキシコ国内で登録することが必要となってきます(商標出願については、TNY Group Newsletter No.6を参照)。更に、フランチャイジーが当該商標を用いるにあたっては、メキシコ産業財産庁(IMPI)に対しその使用許諾を登録する必要があります。フランチャイズの商標使用許諾の登録申請書には、フランチャイズに係る契約書の原本または公証人により公証された写しを添付しなければなりません。なお、フランチャイジーが支払うロイヤルティ、秘密情報や商品やサービス、技術情報を含む部分は省略することができます。この登録申請は、フランチャイズに関わるいずれの当事者も提出することができます。