【タイの著作権法の概要 】

タイにおける著作物を保護する法律として、著作権法(Copyright Act B.E.2537)が制定されています。著作権法は、2015年と、2018年に改正がなされています。

(1) 著作物

 本法律における著作物とは、その表現の方法又は形式を問わず、文学、演劇、美術、音楽、視聴覚、映画、録音、放送その他の文学的、科学的又は芸術的分野の著作物をいうとされ、著作権の保護は、アイデア、手順、プロセス、システム、使用方法、操作方法、概念、原則、発見、科学的・数学的理論には及ばないとされています(第6条)。

(2) 著作権の発生

 著作権は、登録によって権利が発生する特許権や商標権と異なり、登録がなくとも著作物の創作の時点から発生します。

(3) 著作権者

 著作権者は、本法律により著作権の対象となる作品を創作した者をいいます(第4条)。

使用者に雇用されている従業員が雇用の過程で創作した著作物(職務著作)については、著作権が使用者に帰属するとの書面による合意がない限り、著作物を創作した従業員に著作権が帰属します。ただ、その場合でも使用者は雇用の目的に従い、当該著作物を公衆に伝達する権利を有します(第9条)。

 委託契約に基づき創作された著作物については、創作した者と委託者との間で別段の合意がない限り、著作権は委託者に帰属します(第10条)。

(4) 著作権者の権利

 著作権者は、以下の排他的権利を有します(第15条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達
  3. コンピュータプログラム、視聴覚著作物、映画著作物、録音物の原作品又は複製物の貸与
  4. 著作権から生じる利益の他者への供与
  5. 上記1、2、3の排他的権利を条件付き又は条件なしで他者に使用許諾すること

(5) 著作権の譲渡

 著作権者は、自己の著作権の全部又は一部を他人に譲渡することができます。著作権の譲渡が相続によるものではない場合、譲渡人及び譲受人が署名した書面により行われなければなりません。譲渡期間が明記されていない場合は、譲渡は10年間となります(第17条)。

(6) 著作権の保護期間

 著作権は、原則、著作者の生存中及びその死後50年間存続します(第19条)。

 ただ、著作物毎に、保護期間が制定されています(第19条~26条、第49条、50条)。

(7) 著作権の侵害行為

 著作権者の許諾を得ずに行われた以下の行為は、著作権の侵害とみなされます(第27条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達

ただ、著作物毎に、侵害行為が規定されています(第28条~31条)。

(8) 侵害行為への対応

  1. 損害賠償請求(第64条)
  2. 差止請求(第65条)
  3. 刑事罰(第69条~77条)

(9) ベルヌ条約

ベルヌ条約は、いわば世界著作権を認めるものであり、ベルヌ条約の加盟国は互いの国の著作物を保護し合うという点を取り決めている条約となります。日本もタイも、このベルヌ条約に加盟しているため、互いの国の著作物は互いの国の著作権法で保護を受けられることになります。

したがって、日本の著作物もタイ国内においてタイ著作権法による保護を受けることが可能となります。しかし、あくまでもタイ著作権法による保護であるため、保護期間や権利の内容などはタイ著作権法の規定によることになります。