【マレーシアの著作権法の概要 】

(1) 概要及び目的

 著作権制度は、著作権者に著作権の独占的な使用権を与えることで著作者の保護ひいては著作物の創作活動の誘因を保護するとともに、権利侵害となる利用行為類型や権利の存続期間を制限することで著作物の自由な利用を一定の範囲で保護しています。マレーシアにおける著作権制度は著作権法(Copyright Act 1987)によって規律されています。

(2) 要件

 マレーシアにおいて著作権が保護を受けるために登録を受ける必要はありません。但し、以下の要件を満たす必要があります。

1 独創性

 独創性とは、作品が著作者の一部ともいえる労働、技術、判断等から成り立っていることを意味し、同要件が認められるためには、作品が著作者に由来し、かつ、十分な努力が費やされていなければなりません。

2 録音又は記録

著作物は、有形の物であるか、記録・録音されてなければなりません(著作権法7条(3)(b))。

3 カテゴリー該当性

以下のカテゴリーに該当する著作物が、著作権による保護の対象となります(著作権法7条(1))。

  • 言語作品(同項(a))
  • 音楽作品(同項(b))
  • 美術作品(映像、写真、長億、コラージュ、建築物等)(同項(c))
  • 映画(同項(d))
  • 録音物(同項(e))
  • 放送(同項(f))

4 適格性

著作権法は、次の3つの場合に同法に基づく保護が与えられます。

(a) 著作者がマレーシア人等の場合

著作者は適格者でなければなりません。適格者とは、自然人の場合にはマレーシア国民又はマレーシアの永住者を意味し、法人の場合にはマレーシアにおいて設立されマレーシアの法律に基づき法人格を与えられた団体であることを意味します(著作権法3条)。

(b) 最初に発行された場所がマレーシアの場合等

言語作品、音楽作品、美術作品、映画、録音物については最初にマレーシアで発行された場合に、放送の場合にはマレーシアから放送をしている場合に適格性が認められます(著作権法10条(2)(a)、同項(c))。建築物については、マレーシアにおいて建築される場合、その他の美術作品についてはマレーシア国内の建物に組み込まれた場合にも適格性が認められます(同項(b))。作品が他の場所で発行された後、その日から30日以内にマレーシアで発行された場合は、最初にマレーシアで発行されたものとみなされます(著作権法4条(3)(b))。

(c) 作品がマレーシアにおいて製作された場合

国籍、居住又は発行地とは関係なく、当該作品がマレーシアで制作された場合には、著作権による保護が与えられます(著作権法10条(3))。

5 他国への拡張

 著作権(他の諸国への適用)規則(COPYRIGHT (APPLICATION TO OTHER COUNTRIES) REGULATIONS 1990)により、ベルヌ条約加盟国において最初に公開された言語作品、音楽作品、芸術作品、映画等についても著作権法の保護が及びます(著作権法59A条(1)(a))。

(3) 著作権に対する保護

 言語作品、音楽作品、芸術作品、映画、録音及びその派生作品に対する著作権は、以下の事項に関する排他的支配権をその内容とします(著作権法13条(1))。

  • 何らかの有形的形式による複製(同項(a))
  • 公衆への発信(同項(aa))
  • 実演、公衆への展示又は上演(同項(b))
  • 販売その他所有権の移転による公衆への複製物の頒布(同項(e))
  • 公衆への商業的貸与(同項(f))

(4) 著作権侵害に対する救済手続

 著作権者は、著作権に対する侵害行為又は著作権法36条A及び同条Bに反する行為があれば訴訟を提起することができます。著作権法は、以下の種類の救済手段を規定しています(著作権法37条(1))。

  • 差止命令(同項(a))
  • 損害賠償(同項(b))
  • 利益の計算(同項(c))
  • 作品ごとにRM25,000を超えない損害賠償(但し、総額でRM500,000を超えてはならない)(同項(d))
  • その他裁判所が適当と考える命令(同項(e))