【フィリピンの労務における休日・休暇の法制度 】

(1) 週休に関するルール

フィリピンでは、使用者は従業員に6日の労働日ごとに24時間以上の休日を与えることとされています(労働法91条(a))。予定された休日に労働者が働く場合には30%の休日手当を支払う必要があります。

(2) 祝日に関するルール

フィリピンでは労働法の規定によって、原則あらゆる職種の従業員が、有給休暇及び祝日労働における給与支払ルールの対象となります。また、ボーナスやインセンティブのように使用者が自由に定められるものとは異なり、有給休暇は労働者に認められた当然の権利とされています(労働法94条)。ただし、政府職員、マネジメント層の従業員、事業所外従業員、使用者の家族である従業員、家事使用人、他人に対して個人的なサービスを提供する者、及び、出来高払いを受けるものとして労働雇用長官が決定した者についてはこの適用を受けないとされています(労働法82条)。

1 通常祝日

従業員が通常祝日に労働した場合、通常の日給の200%相当額が支給されなければならず、労働しなかった場合でも有給(通常の日給の100%)扱いとなります(労働法94条)。ただし、小売又はサービス業で、常時雇用する従業員が10人未満の事業を除きます。通常祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び9849号)。

(1) 正月(New Years Day) – 1月1日

(2) 聖木曜日(Maundy Thursday) – 年ごとに異なる

(3) 聖金曜日(Good Friday) – 年ごとに異なる

(4) 勇者の日(Araw ng Kagitingan) – 4月9日に一番近い月曜日

(5)メーデー(Labor Day) – 5月1日に一番近い月曜日

(6) 独立記念日(Independence Day) – 6月12日に一番近い月曜日

(7) イスラム教断食明け大祭(Eidul Fitr) – 年ごとに異なる

(8) イスラム教犠牲祭(Eidul Adha) – 年ごとに異なる

(9) 英雄の日(National Heroes Day) – 8月の最後の月曜日

(10) ボニファシオ記念日(Bonifacio Day) – 11月30日に一番近い月曜日

(11) クリスマス(Christmas Day) – 12月25日

(12) リサール記念日(Rizal Day) – 12月30日に一番近い月曜日

2 特別祝日

特別祝日に労務を提供した場合には、通常の日給の130%相当額が支給されなければなりません。通常祝日とは異なり、既存の会社慣行又は労働協約(CBA)がない限り、ノーワーク・ノーペイ原則が適用されますが、実際には通常祝日と同様、労務の提供をしなくても有給としている企業が多くみられます。フィリピンにおける特別祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び10966号)。

(1) ニノイ・アキノの日(Ninoy Aquino Day) – 8月21日に一番近い月曜日

(2) 諸聖人の日(All Saints Day) – 11月1日

(3) 無原罪の聖マリアの日(Feast of the Immaculate Conception of Mary) – 12月8日

(4) 大晦日(Last Day of the Year) – 12月31日

(3) 休暇に関するルール

以下、フィリピン労働法によって労働者に付与される休暇とその取扱いについて説明します。

1 サービスインセンティブ休暇

勤続1年以上の労働者はサービスインセンティブ休暇(通称SIL)を取得できます(労働法第95条(a))。これはいわゆる年次有給休暇にあたるものです。「勤続1年以上」とは勤務開始日から起算して12ヶ月以上の勤続(承認された欠勤、休日、有給の通常祝日を含む)を意味し、勤務は連続的に行われなくてもかまいません。年末時点で消化されなかった分については使用者に買取を要求することができます。

2 一人親休暇

父親であるか母親であるかを問わず、一人親は1年あたり7日の育児休暇を有給で取得することができます(共和国法第8972号)。当該休暇の取得には、勤続1年以上であること、十分な余裕をもって雇用者に通知をしていること、さらに一人親証明書(居住地の社会福祉・開発省のオフィスで取得可能)を雇用者に提示していることが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

3 出産休暇

出産休暇は105日分が有給で付与され、労働者の意思で無給分をさらに30日分取得することができます(共和国法第11210号)。当該権利は非公式な労働(課税されず、国民総生産にも現れない種類の労働)を含むあらゆる女性労働者について、さらに民法上の身分、嫡出子であるかどうかなどに関わらず認められており、流産や緊急妊娠中絶に至った場合も対象となります。また一人親の出産である場合にはさらに15日分が追加されます。なお、婚姻関係にない男性パートナーに対して7日分までの有給を分け与えることもできます。

4 婦人疾患に関わる休暇

婦人疾患に関する手術を受けた女性労働者は、2ヶ月間の有給休暇を取得する権利を有します(共和国法第9710号)。労働雇用省(DOLE)のガイドラインによれば、婦人疾患には、子宮内容除去術、子宮摘出、卵巣摘出又は乳房切除その他の外科的処置を要するものを含みます。この休暇を取得するためには、手術直前の12ヶ月間で少なくとも6ヶ月間の継続勤務を行ったこと、婦人疾患に関する休暇の申請を行っていること、及び資格を有する医師による婦人疾患の手術を受けたことが必要となります。

5 父親休暇

法律上婚姻している男性の労働者は、7日間の父親休暇を有給で取得する権利があります(共和国法第8187号)。この休暇を取得するためには、当該労働者が出産時に雇用状態にあること、妻の妊娠及び出産予定日について使用者に通知すること、妻が出産、流産又は中絶に至ったことが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

⑥ 家庭内暴力の被害女性のための休暇

家庭内暴力の被害を受けた女性は、通常の有給休暇に加えて10日間まで有給休暇を取得することができ、保護命令の内容によってはさらに延長が可能です(共和国法9262号)。当該休暇の取得には、バランガイ議長若しくは議員、検察官、裁判所事務官から、被害者の使用者に対して証明書が提示される必要があります。当該権利を現金に代えることはできません。