バングラデシュの労働組合や労働争議については、2006年労働法(以下「労働法」)に定められています。
(1) 労働組合の設立要件
労働法にて、全ての労働者は労働組合を設立し、加入する権利を有すると規定されています(労働法第176条)。労働組合は、役員の情報、加入者の誓約書や規約等を提出の上登録しなければなりません(労働法第177条、第178条)。労働組合の登録には、事業場で雇用されている労働者の20%以上が加入していることが要件のひとつですが、同一の使用者のもと、事業場に複数の労働組合が存在し、同一業界で連携して活動している場合は、1つの労働組合とみなされます(労働法第179条(2))。1事業場又は複数の事業場につき、労働組合を3組織まで登録できます(同条(5))。
(2) ストライキ
1 事前通知の義務
当事者は、事前の話し合いや調停を経ずに、ストライキを行うことはできません。労働法の規定に基づく調停により合意に至らなかった場合、相手方にストライキについて通知することができ、通知には開始日を記載する必要があります。なお、ストライキの開始日は当該通知の後7日~14日の間でなければなりません。また、ストライキの通知には、規定された方法で実施された秘密投票にて組合員の3分の2の同意が必要です。当事者は、労働裁判所に裁定を申し立てることもできます(労働法第211条(1))。仲裁の継続中、労働裁判所又は労働上訴審判所で係争中に、ストライキの通知を出すことは認められていません(労働法第225条)。
2 政府による禁止
ストライキが30日を超えて実施された場合は、政府は書面にて禁止することが認められていますが、ストライキの継続が公共の生活に深刻な問題又は国益の損害を引き起こすと認めた場合は、30日以内であってもいつでも書面にて禁止することができます(労働法第211条(3))。公共サービスの場合は、政府は書面により、いつでもストライキを禁止することができます(同条(4))。
3 一定期間の禁止
事業所が新しいものであるか、外国人に所有されている、または外国人と共同で設立されている場合、ストライキは、生産を開始して3年間は禁止されますが、他の労働争議解決に関する規定は適用されます(労働法第211条(8))。
4 違法なストライキ
労働法第227条に、違法なストライキについて規定されています。
- 規定された方法に基づく通知なしに又は通知に記載したストライキの日付の前後に又は労働法第225条(上記1事前通知の義務)に違反して、労働争議の宣言、開始または継続した場合
- 労働法第209条(規定に従い使用者又は団体交渉代理人により提起された労働争議でなければ、労働争議とみなされない)に規定された方法以外で提起された労働争議の結果として宣言、開始又は継続した場合
- 労働法第211条(労働争議の解決)又は第226条(ストライキ又はロックアウトを禁止する労働裁判所及び労働上訴裁判所の権限)に基づき発出された命令に違反して継続した場合
- 当該労働争議について調停又は裁定が実施されている期間中に宣言、開始又は継続した場合
なお、違法なストライキの結果として宣言されたロックアウト、違法なロックアウトの結果として宣言されたストライキは違法とはみなされません。
違法なストライキを開始、継続、推進した労働者は、6ヶ月以下の懲役もしくは5,000タカ以下の罰金またはその両方が科されます(労働法第294条(1))。