【フィリピンの労働組合及びストライキに関する法制度の概要 】

(1) 団結権

フィリピンでは1987年憲法により、すべての労働者について、団結権、団体交渉権及び平和的な団体活動を行う権利、例えば合法的ストライキを行う権利など、労働者の権利利益に影響を与えうる使用者の意思決定プロセスに関与する権利を認めています。とりわけ労働法においては、団体交渉を行う自由、団結する自由、労働者の啓発といったものが国家の重要政策として位置づけられています。また、国際労働機関(ILO)の加盟国として、フィリピン法は、労働者が自ら団体を設立し、それに加入することのできる自由及び団体の規約を作り、活動内容を決定する自由を保護しています。

 労働組合は、組合員の賃金、労働時間その他の雇用状況について好ましい条件を勝ち取ることを第一目的とし、組合費を納める労働者自身によって組織され、投票で選ばれた役員を中心に運営されます。労働組合は、労働雇用省(DOLE)の労使関係局(BLR)に登録されて初めて「合法的な労働組合」(”LLO”と呼ばれます)として認められ、労働法下における代表権や団体交渉権を行使するための法的資格を与えられます。

 組合を自発的に解散するためには、解散を目的として招集された大会において、一般組合員の3分の2以上の賛成を得る必要があります。また組合の強制的解散事由としては、組合員リストや組合役員選挙に関する不実記載、偽りの記述、欺罔行為などが挙げられます(労働法第239条)。

(2) 団体交渉権

団体交渉は、労使関係の安定化などをその目的として認められている権利です。団体交渉を通じて合意に至った内容は労働協約(CBA)としてまとめられ、使用者と組合の双方に対する権利及び義務として拘束力を持ちます。団体交渉そのものの拒否、交渉における強制的議題の忌避、交渉時の不実な行為、及び労働協約の違反といったものはすべて団体交渉義務違反とされ、労働法における不当労働行為とみなされます。労使間での交渉が行き詰まった場合には、第三者たる仲裁者が介入することで交渉継続が図られます。

(3) ストライキとロックアウト

 労働法は、団体交渉などの目的で労働者が団結権を行使し活動することを認めています。ここでいう行動とは例えばストライキのことで、労使紛争の結果として従業員が労働を一時的に停止することを指します。他方、使用者に認められた権利としてロックアウトがあり、これは、労働者による労働力の供給を一時的に拒否することを指します。

 ストライキ及びロックアウトは、団体交渉が行き詰まった場合や、不当労働行為が行われた場合にその実施が認められています。労働協約の内容に違反しただけでは直ちにストライキやロックアウトの正当な事由とはなりませんが、労働協約で定められた経済条項に関する悪意ある違反、重大な違反が見られた場合は正当な事由として認められることになります。また、組合内部及び組合間における紛争は正当な事由とは認められません。ストライキ及びロックアウトの実施にあたっては事前に労働雇用省への通知が必要で、通知には使用者の名前と住所、組合の名称と住所、使用者の属する産業の性質、組合員の数及び組合内の交渉部門にいる従業員数、その他紛争解決に関わる諸情報が含まれなければいけません。

 ストライキ及びロックアウトを実施する場合、交渉行き詰まりを原因とする場合は30日以上前、不当労働行為を原因とする場合は15日以上前に中央斡旋調停委員会(NCMB)へ事前通知をする必要があります。通知から実施までの期間は「クーリングオフ期間」と呼ばれており、この期間、中央斡旋調停委員会は両者の斡旋・調停に努めるものとされています。なお非合法なストライキ活動や、ストライキ中の非合法な行為は、ストライキを強制的に解散させる事由となります。