(1) 関連する法令
メキシコでは、労働組合を結成する権利やストライキの権利はメキシコ合衆国憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)第123条により保障されています。また、労働組合やストライキに関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に規定されていますので、その内容を紹介します。
(2) 労働組合の結成及び権利
労働組合は、15歳以上の労働者20人以上で構成することができます。連邦労働法には、労働組合の種類として、職業別労働組合(同一の職種・職業に従事する労働者により組織されるもの)、企業別労働組合(同じ企業に勤める労働者により組織されるもの)、産業別労働組合(同一の産業に従事する労働者により組織されるもの)、全国的産業別労働組合(全国的な大規模産業に従事する労働者により組織されるもの)、小規模職業別労働組合(同一地区内の同一職業に従事する労働者により組織されるもの)が例示されていますが、これら以外の労働組合も組織されうると規定されています。
一般に指揮、管理、監査、監督や、会社や事業所内での使用者の業務に関連する職務を行う信任労働者(trabajador de confianza)は労働組合の組合員にはなれません。また、外国人労働者は、労働組合の役員となることはできません。
労働組合は、労働組合結成議事録の認証済み謄本、組合員リスト、組合規約の認証済み謄本、組合役員を選出した際の会議議事録の認証済み謄本を提出し、連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral、以下「CFCRL」といいます。) に登録しなければなりません。
労働組合は、労働協約の締結主体であり、使用者との間で団体交渉を行うことができます。労働組合の組合員たる労働者を雇用する使用者は、労働者の要請に応じて労働組合と労働協約を締結する義務を負うとされており、使用者がこれを拒んだ場合、労働者はストライキを実施することができます。したがって、使用者は、労働協約の締結の申し出があった場合には真摯な対応が求められます。
(3) ストライキ
ストライキとは、労働組合を含む、2名以上の労働者の同盟によって行われる一時的な業務の停止と定義され、単なる業務停止行為に限定されなければならないと規定されています。すなわち、暴力行為は行いえず、大多数のストライキ参加者が人や財産に対して暴力的な行為を行った場合は、当該ストライキは違法となります。
ストライキの手続は、請願書の提出によって開始され、1請願書は使用者に宛てた書面であり、ストライキを行う意思の表明、ストライキの目的、仕事を中断する日と時間あるいはストライキが行われるまでの期間を示すこと、2請願書の写しが管轄裁判所へ提出されること、3業務停止の通知が、請願書に明示された業務停止日の6日前までに、公務にあっては10日前までになされること、4ストライキの目的に応じた必要書類を添付する、といった要件を満たす必要があります。
そして、裁判所は、上記2の請願書の受領から48時間以内に、その写しを使用者に交付します。これを受領した使用者は、その後48時間以内に、裁判所に回答書を提出しなければなりません。また、CFCRLあるいは調停センターは、ストライキ開始までの期間に、当事者を召喚し、交渉や調停協議を行う権限を有しており、裁判所は、請願書の受領から24時間以内に、当事者が和解を行う機会を設けることができるよう、管轄のCFCRLや調停センターにこれを通知します。なお、CFCRLや調停センターは2019年5月の連邦労働法改正により新設された機関であり、これまではその機能を労働調停仲裁委員会が担っていました。当該改正労働法にもとづく運用の開始は、3段階に分け進められており、2020年11月に第1フェーズ、2021年11月に第2フェーズが開始され、21州(ゲレロ州とバハカリフォルニアスル州においては、連邦管轄の業務のみ)において新体制での運用が始まっています。残る、チワワ州、メキシコシティ、コアウイラ州、ハリスコ州、ミチョアカン州、ナヤリット州、ヌエボレオン州、ソノラ州、シナロア州、タマウリパス州、ユカタン州においては、2022年5月に予定される第3フェーズの開始までは、依然、労働調停仲裁委員会がこれを担うこととなります。
その後、調停において和解に達すれば、ストライキは行われませんが、和解に達せず、設定されたストライキ実施予定日を迎えると、ストライキが開始されます。