株式譲渡について、主に会社法にて定められています。
(1) 株式譲渡にあたって確認すべき事項
- 株券発行会社であるか
株券発行会社であるか株券不発行会社であるかによって、株式譲渡の方法および対抗要件が異なるため、事前に確認する必要があります。株券発行会社で、実際に株券を発行していない会社もありますので、注意が必要です。株券発行会社か否かについては、登記簿謄本で確認することができます。
2. 株式に譲渡制限があるか
株主は株式を譲渡することができますが(会社法第127条)、譲渡制限がある場合、会社の承認が必要です。
(2) 株式譲渡の手続き
- 株式譲渡承認の請求
前述の通り、譲渡制限株式の譲渡については、会社から承認を得なければなりません。譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第136条)。また、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第137条1項)。
2. 株式譲渡の承認にかかわる決議
譲渡制限株式の譲渡を承認するか否かの決定をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社の場合は、取締役会)の決議によらなければなりません(会社法第139条1項)。また、株式会社は、譲渡等承認請求をした者に決定の内容を通知しなければなりません(会社法第139条2項)。
株式会社が、譲渡制限株式の譲渡を承認しない旨の決定をした場合で、承認請求者から「不承認時に会社または指定買取人が買い取る請求」を受けた会社は、次のいずれかで、当該譲渡制限株式を買い取らなければなりません。(i) 会社が買い取る(会社法第140条1項)、(ii) 指定買取人が買い取る(対象株式の全部又は一部を買い取る者)(会社法第140条4項)、(iii) 指定買取人が一部を買い取り、残りを会社が買い取る(同項)。
3. 株式譲渡契約の締結
譲渡の当事者間で譲渡契約を締結します。譲渡契約は法律にて義務づけられていませんが、特に株券が発行されない場合は、株式の売買を確実なものにするために、株式譲渡契約を締結するのが一般的です。
4. 代金決済
譲渡契約に基づき、譲渡対価の支払いをします。株券発行会社の株式の譲渡の場合は、譲渡人から譲受人に株券を交付します。当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法第128条1項)。
5. 株式名義書換請求
原則として、譲受人と譲渡人が共同で(株券発行会社の場合は、株券を提示すれば譲受人単独でも可能です(会社法施行規則第22条2項1号))、会社に対して株主名簿を書き換えるように請求し(会社法第133条1項2項)、会社は請求に基づき、株主名簿を書き換えます。
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができませんので(会社法第130条1項)、株主名簿の書換えの手続きを行う必要があります。株券発行会社の場合、株券の交付が会社以外の第三者に対する対抗要件となり、名簿の書換えが会社に対する対抗要件となります(会社法第130条2項)。
6. 株主名簿記載事項証明書の交付請求
譲受人は会社に対して、株主名簿記載事項証明書を交付するよう請求することができ、会社は請求に基づき、譲受人に株主名簿記載事項証明書を交付します(会社法第122条1項)。
(3) その他の留意点
株式の売却時について、譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税がかかります。株式を取得した側については、原則として税金は発生しませんが、相続税に該当するとみなされる場合や、「時価」と乖離した価格で譲渡された場合等は、税務上の対応が必要となります。