【マレーシアにおけるE-コマース関連規制の概要 】

(1) 外資規制

 E-コマース事業に関して外国資本を規制する法律・規則等は確認できず、100%外資の会社E-コマース事業を行うことが可能であると考えられます。

(2) WRTライセンス

 流通・サービス業を行う事業体に対しては、国内取引消費者省(MDTCC:Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism)よりWRT ライセンス(Wholesale Retail Distributive Tradeライセンス)の取得が義務付けられています。E-コマース事業は、サービス業に該当し、WRTライセンスの取得は必要となるものと考えられます。WRTライセンスは、実務上は外資が51%以上となる場合にのみ要求されています。

(3) 消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)・消費者保護(電子商取引)規則(Consumer Protection (Electronic Trade Transactions) Regulations 2012)

 消費者保護法は、消費者の保護、国家消費者諮問評議会及び消費者苦情審判所の設立、及びそれに関連する事項について規定する法律です。消費者保護(電子商取引)規則は、オンラインマーケットプレイスに従事する事業者に対し消費者の利益を保護するための一定の措置を講じることを義務付けています。

 具体的には、オンラインマーケットプレイスにおいて商品又はサービスの供給を目的とする事業者(以下「オンライン事業者」という。)は、以下の情報をウェブサイト上に開示する必要があります(同規則3条)。

  1. 事業及び事業者の名前
  2. 会社の登録番号
  3. 事業者の電子メールアドレス及び電話番号、又は住所
  4. 商品又はサービスの主な特徴
  5. 輸送費、税金、その他の費用を含む商品又はサービスの総額
  6. 支払方法取引条件
  7. 購入者への商品又はサービスの配達予定時間

また、オンライン事業者は、以下の措置を取らなければならなりません(同規則4条)。

  1. 注文の確定前にバイヤーが申込を修正できるようにする措置
  2. 注文を受領したことを遅滞なくバイヤーに通知する措置

 さらに、オンラインマーケットプレイスの運営者は、商品又はサービスの供給者の名前、電話番号及び住所に関する記録を2年間にわたり保存するための合理的な措置を講じる必要があります(同規則5条)。

(4) 個人情報保護法(Personal Data Protection Act 2010)に基づく登録

 E-コマース事業ついて、個人情報保護法上の「個人情報の処理を行う者」に該当すると考えられることから、個人情報保護法に基づく対応も必要となります。

(5) 取引表示法(Trade Description Act 2011)

 取引表示法は、商品やサービスの供給に関連する誤った表示、虚偽又は誤解を招くような説明、行為及び慣行を禁止することで良好な取引慣行を促進するとともに、関連又は付随する事項の提供を目的とする法律です。取引表示法は電子取引にも適用され、商品及びサービスに関して虚偽の説明又は広告をすることは禁止しているため、同法に基づく対応も必要となります。