(1) 被相続人が外国人である場合の準拠法
ベトナム民法では、不動産に関する相続については当該不動産が所在する国の法律に従って処理され、その他の財産については、相続財産を残した者が死亡の直前に有していた国籍国の法律に従って処理されることになります。
(2) 法定相続
- 遺言書がない場合における法定相続人の順序は、次のとおりです。
・第1順位 被相続人の配偶者、実父母、養父母、実子、養子
・第2順位 被相続人の祖父母、兄弟姉妹、実孫
・第3順位 被相続人の曽祖父母、叔父叔母、実の甥姪、実の曾孫
同じ順位内の相続人間の相続分は均等です。
- 被相続人の子が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、被相続人の孫が相続人となります。被相続人の子及び孫が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、曾孫が相続人となります。
(3) 債務の相続
債務も相続の対象となりますが、相続人は、別段の合意がない限り、被相続人の遺産の範囲内で債務の履行義務を負うに過ぎません。遺産分割が実行された場合についても、各相続人は、別段の合意がない限り、分割により取得した遺産の範囲内で債務の相続義務を負うに過ぎません。したがって、別段の合意がない限り、遺産によって履行がなされない債務については消滅することになります。
(4) 相続放棄
相続人は、自己の債務の履行を免れる目的である場合を除き、相続放棄をすることができます。日本法に基づく相続放棄は家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければならず、また、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」という期間制限がありますが、ベトナム法の場合、自ら書面を作成すればよく、また、遺産分割が実行される前であればいつでも相続放棄をすることができます。