【マレーシアにおける取締役に関する法規制の概要 】

 マレーシアにおける取締役に関する法規制は、会社法(Companies Act 2016)によって規律されます。

(1) 取締役の法定員数について

 非公開会社の取締役の法定人数は最低1名(196条1項(a))、公開会社の取締役の法定人数は最低2名(196条1項(b))と規定されています。また、非公開会社及び公開会社の双方とも、法定された数の取締役は、主たる居所をマレーシアに置く、通常マレーシアに居住する者である必要があります(196条4項(b))。

 ただし、定款で法定人数以上の人数を最低人数として定めた場合は、定款で規定した数の取締役を選任する必要があります。

(2) 取締役の資格について

 取締役は、18歳以上の個人である必要があり(196条2項)、かつ以下の欠格事由に該当する者は、原則取締役に就任することができません(198条1項)。

  1. 破産して免責を受けていない者(同条(a))
  2. 会社の設立、組織、運営に関する法令違反により有罪判決を受けた者(同条(b))
  3. 賄賂、詐欺により有罪判決を受けた者(同条(c))
  4. 213条等の違反により有罪判決を受けた者(同条(d))
  5. 199条に基づき裁判所から欠格の宣告を受けた者(同条(e))

(3) 取締役の選任及び解任について

 取締役は株主総会の普通決議により選任します(202条2項、291条)。ただし、定款で定めた場合には、取締役会決議により選任することが可能となります(202条3項)。 

 取締役の退任については、公開会社と非公開会社で異なります。公開会社の場合、選任時期が早いものから順番に定期総会ごとに3分の1の取締役が退任することとなります(205条3項(b))。退任する取締役は、欠格事由に該当しない限り原則再任が可能です(205条5項)。非公開会社の場合、定款又は選任の条件において取締役の任期が規定されない場合、取締役は、以下の事由が生じるまで取締役の地位にとどまることができます(205条2項)。

  1. 欠格事由に該当した
  2. 辞任した
  3. 解任された
  4. 退任の書面決議がなされた

(4) 取締役の権限及び義務について 

 211条が取締役の権限について規定しています。

  1. 会社の事業及び業務は取締役会により又は取締役会の指示のもと運営される(同条1項)
  2. 取締役会は、この法律又は会社の定款に含まれる変更、例外又は制限を条件として、会社の事業及び業務の運営並びに指揮監督に必要な全ての権限を有する(同条2項)

 主要な取締役の義務は、213条から228条に規定されています。213条1項は「会社の取締役は、常に、本法律に従い、適切な目的のために、かつ会社の最善の利益のために誠実に行動しなければならない」と定めており、取締役が会社に対して負う主要な義務の一つを規定しています。

 上記の義務は以下の4つの要素で構成されています。

  1. 取締役の権限は、同法に従って行使されなければならない
  2. 取締役の権限は、誠実に行使されなければならない
  3. 取締役の権限は、適切な目的のために行使されなければならない
  4. 取締役の権限は、会社の最善の利益のために行使されなければならない