(1) 取締役の要件
(a) 人数
株式会社は、1名又は2名以上の取締役を置かなければならないと規定されていますが(会社法326条1項(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))、取締役会設置会社において、取締役は3名以上とする必要があります(331条5項)。さらに、取締役会において特別取締役による決議の定めを設ける場合は、6名以上(うち1名以上が社外取締役であること)とする必要があります(373条1号2号)。株式譲渡制限会社である非公開会社は、取締役会設置の義務がなく、取締役会不設置の場合、取締役の人数は1名以上となります。
(b) 国籍
取締役の国籍について特に規定はありませんので、外国籍の方も代表取締役を含む取締役になることは可能です。
(c) 常駐等の規制
代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有していなければならないという取扱いは廃止され、代表取締役を含む取締役の常駐の規制はありません。
(d) 資格の規制
取締役の欠格事由として、以下の者が定められています(331条1項)。
- 法人
- 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 上記iii)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)
その他、未成年であることは欠格事由とされていませんので、未成年者でも取締役になることができますが、会社との間で委任関係を結ぶことになりますので(330条)、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。また、破産者も、取締役になることができますが、同じく、会社と取締役の関係は委任関係であるため(330条)、取締役が破産手続開始の決定を受けると当然に委任が終了し(民法653条2号)、すなわち取締役の地位にある者が破産手続開始の決定を受けると、取締役を自動的に退任することになります。破産した後も取締役に就くためには、再度、株主総会決議で選任されなければなりません。
また、社外取締役については、平成26年の改正会社法において、より社外性が求められる要件が加わっておりますので、社外取締役の選任を検討される場合は、法令にて求められる要件の確認が必要です。
(a) 取締役の権限
取締役は、取締役会を構成する一員としての役割を担います。取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職に関する職務を行うと定められており(362条2項)、取締役会の構成員である取締役は、取締役会に出席し、議論に参加することによって、これらの職務を担う役割があると言えます。取締役会において意思決定しなければならない項目として、会社法は、i) 重要な財産の処分及び譲り受け、ii) 多額の借財、iii) 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、iv) 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止等を定めています(362条4項)。
取締役は単独で、取締役会を招集し(366条)、また、株主総会等の決議の取消しの訴え(831条)、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)をする権限を有します。
(b) 会社との関係
前述の通り、取締役は、株式会社とは委任の関係に立ち(330条)、会社に対し善良なる管理者の注意義務をもって委任事務を処理する義務を負い(民法644条)、法令及び定款並びに株式会社の決議を順守し、株式会社のために忠実に職務を遂行しなければなりません(355条)。
また、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合(競業取引)や株式会社との間で取引をしようとする場合(利益相反直接取引)、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において、株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとする場合(利益相反間接取引)には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項)。取締役会設置会社では、当該競業取引や利益相反取引についての承認は取締役会が行うことができます(365条1項)。
取締役の責任は、従来、過失が無くても会社に損害を与えた場合には責任を問われる「無過失責任」でしたが、平成26年の改正会社法により、会社に損害を与えないように注意を尽くしたことが示されれば、賠償の義務を負わない「過失責任」に改められ、責任が緩和されました(120条4項、423条、462条2項、465条等)。
(3) 取締役の解任
取締役は、いつでも、株主総会の決議による解任が可能です(339条1項)。株主総会での解任決議が否決された場合でも、一定の要件を満たす株主は、取締役の職務執行に不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があるなどの解任理由がある場合、取締役の解任請求を提訴することが可能です(854条1項)。一方、株主総会にて、正しい手続きで解任した場合であっても、解任について正当な理由がない場合は、解任された取締役は会社に損害賠償を請求することができます(339条2項)。