【フィリピンのセクシュアル・ハラスメントに関する法規制の概要 】

 職場におけるセクシャルハラスメントは、主に1995年反セクシャルハラスメント法によって規制されます。

反セクシャルハラスメント法では、被害者の行為への同意は重要ではなく、重要なのは、その行為が上司等権限や影響力のある立場の者によって行われたことである点には注意が必要です。被害者の同意があったからといって直ちに免責されません。

同法においてセクシャルハラスメントとされる行為には、以下のようなものがあります。

  1. 雇用の条件、または利益や特権の付与の前提条件となり得る性的要求、あるいは要求を拒否することで従業員や学生に悪影響を及ぼすような性的要求をすること
  2. 従業員に対して不快感、敵意または脅迫を感じる職場環境を作り出すような性的な行為

 加害者を教唆、誘導、幇助した者は、その行為を行った者と同等の責任を負い、被害者からハラスメントについて知らされていたにもかかわらず、直ちに改善等の対応をしなかった場合、雇用主も責任を負う点には注意が必要です。

 同法に基づくすべての行為は、1ヶ月から6ヶ月の禁固刑、または1万ペソから2万ペソの罰金、もしくはその両方で処罰されます。また、被害者は独自に損害賠償請求訴訟を起こすことができます。

なお、2019年Safe Spaces法が、より広く公共の場での性別に基づくセクシャルハラスメントを、加害者の意図に関係なく、「いかなる人に対しても望まれない性的な行為や発言」と定義し規制しています。これらは、職場においてなされる場合を含みます。

 Safe Spaces法のよる罰則は反セクシャルハラスメント法に基づくものと比較して一般に軽いものとされていますが、Safe Spaces法に規定されるセクシャルハラスメントは、加害者が、権限や影響力がある者である必要がなく、より広範で一般的な定義となっていることには注意が必要です。Safe Spaces法ではオンラインでのセクシャルハラスメントも明記されています。

 Safe Spaces法においても、雇用主は、性別を理由とするセクシャルハラスメント行為を行った場合の責任に加え、報告されたセクシャルハラスメントに対処しないことによる責任を負う可能性があります。