【メキシコの監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限 】

本稿では、商事会社一般法(Ley General Sociedades Mercantiles)に定める監査機関を解説します。

(1) 監査を行う機関

メキシコには、日本の監査役に相当する取締役の職務執行の監査を担う機関として、監査役(Comisario)という機関が存在します。

一部、証券市場法(Ley de Mercado de Valores)などに従い、一定の条件を満たす機関設計を行った法人の場合、当該監査役とは異なる監査機関の設置が求められますが、本稿ではその詳細は割愛します。

(2) 監査役

① 設置が求められる会社形態

監査役は、株式会社(Sociedad Anónima)および株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)において設置が求められます。日本とは異なり、メキシコにおいては、取締役会が設置されなくても株式会社あるいは株式合資会社であれば監査役の設置が求められます。

② 監査役の資格

監査役には、公認会計士などの資格は要求されておらず、株主または第三者であってもよいとされています。ただし、次の者は監査役にはなれません。

  • 法律上、取引を行う資格がない者。

取引を行う資格がない者は、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者と規定されています。

  • 当該会社の従業員、当該会社の株式の25%以上を保有する会社の従業員、または当該会社が50%以上の株式を保有する会社の従業員。
  • 取締役の直系血族、4親等以内の傍系血族と2親等以内の姻族。

③ 監査役の権限および義務

監査役は、取締役の職務執行および会計の監査を行うために、以下のような権限および義務を有します。

  • 会社の業務の管理・遂行・執行を監督すること。
  • 株主が、監査役に対し、経営に不正があると思われる事実を書面で告発した場合、監査役は、株主総会への報告書にその旨を記載し、必要と思われる事項および議案を定めること。
  • 取締役の職務執行への保証を確保・維持し、不正があった場合には遅滞なく株主総会に報告すること。
  • 招集される取締役会のすべての会議に、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 株主総会には、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 取締役会および株主総会の議題に、適当と考える事項を加えること。
  • 取締役が招集しない場合その他適当と判断した場合には、株主総会を招集すること。
  • 業務の監視を行うために必要な業務、文書、記録その他の証拠の調査を行い、監査役の報告を行うことができるようにすること。
  • 取締役に対し、少なくとも財務状況の報告書と決算書を含む月次情報を要求すること。
  • 定時株主総会前に、以下の内容を含む監査役の報告を行うこと。
    1. 会社の特定の状況を考慮して、会社の会計および報告の方針および基準が適切かつ十分であるかどうかについての監査役の意見。
    2. 取締役が提示した情報の中で、それらの方針や基準が一貫して適用されているかどうかについての監査役の意見。
    3. 上記の結果、取締役が提出した情報が、会社の財政状態および経営成績を如実かつ十分に反映しているかどうかについての監査役の意見。