【タイの監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限 】

(1) 業務監査を行う機関

 タイでは、日本の監査役のように業務監査を行う機関はありません。取締役の任免は株主総会においてなされることとされており(民商法典1151条)、株主が業務監査の機能を果たしています。

 一方で、上場会社では、独立取締役3人以上から構成される監査委員会の設置が必要です(Notification of the Capital Market Supervisory Board No. Tor Jor. 39/2559 17条3号)。

(2) 会計監査を行う機関(監査人)の設置条件、資格および権限

 タイでは、全ての会社が監査人(Auditor)を設置しなければならず、創立総会において、最初の監査人の選任をすることが定められています(民商法典1108条6号、公開会社法35条7号)。監査人は、定時株主総会において選任され、再任することができます(同法1209条、公開会社法120条)。

 会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは、監査人になることができません(民商法典1208条、公開会社法121条)。また、監査人は、原則として、タイ国公認会計士でなければなりません(会計法11条)。

 監査人は、いつでも会社の帳簿を閲覧する権利を有します(民商法典1213条、公開会社法126条)。また、会社の帳簿などの閲覧について、監査人は、会社の取締役、従業員、代理人などに対して質問し、関連する証拠書類の提出を求める権利を有します(民商法典1213条、公開会社法122条)。

 非公開会社では、監査人により作成された財務諸表は、その基準日の4か月以内に株主総会において承認を受ける必要があります(民商法典1197条)。

公開会社では、監査人は、会計監査法に基づいて作成した報告書を定時株主総会に提出する必要があります(公開会社法123条)。また、監査人により作成された財務諸表は、年度末日後4か月以内に開催する定時株主総会において承認を受ける必要があります(同法112条1項)。