【バングラデシュの監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限 】

 バングラデシュの会社法では、会計書類を調査する監査人(Auditor)の設置が義務づけられていますが、日本の会社法上の監査役のように、業務監査を行う機関は定められていません。会社法にて規定されている会社秘書役(Company Secretary)の主な役割や責任のひとつに「会社のコンプライアンスに関する対応」があり、Chartered Secretaries Act 2010に基づき設立されたInstitute of Chartered Secretaries of Bangladesh (ICSB)が発行している「BANGLADESH SECRETARIAL STANDARD(BSS)」にて、会社秘書役によって会社が遵守すべき事項が定められております。コンプライアンスという観点で、会社が任意に会社秘書役を選任することができます。なお、公開会社では、会社秘書役の選任が必要とされています。

  1. 監査人の適格要件

 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかであることが要件となっています(会社法212条(1)(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))。また、当該会社の役員又は従業員、当該会社の役員又は従業員のパートナーもしくは雇用関係にある者、当該会社に債務がある者若しくは当該会社に対する第三者の債務を保証している者、当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役や株主である者等は、監査人に就任することができません(同条(2))。

     2. 監査人の選任と報酬

 会社は、株主総会にて、次の株主総会までが任期となる1人または複数の監査人を選任し、選任から7日以内に、選任した監査人にその旨を通知しなければなりません。なお、選任のためには、本人が事前に書面で同意する必要があります(210条(1))。選任された監査人は、選任の通知を受けた日から30日以内に、商業登記所に対して書面にて諾否について通知しなければなりません(同条(2))。なお、株主総会にて監査人が選任されない場合、政府が任命することができます(同条(4))。

会社の最初の監査人は会社の登記の日から1か月以内に取締役会により任命され、任命された監査人の任期は、最初の定時株主総会の終結時までとされています(同条(6))。取締役会は、監査人に欠員が生じた場合、当該欠員を補充することができますが、欠員が続く場合、残存する監査人が務めることができ(同条(7))、任期は次の定時株主総会までとなります(同条(8))。任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ行うことができます(同条(9))。

株主総会にて任期が終了する監査人は、次に該当する場合を除き、再任されなければならないとされています。① 再任の不適格事由に該当することとなった場合、② 監査人本人による再任を受諾しない旨の書面による通知、③ 他の者を任命する決議又は現在の監査人を再任しない旨を明示的に示した決議がなされたこと。また、会社は、監査人の死亡、能力欠如、不正等を理由に再任しないことを決議することができます(同条(3))。

株主総会にて、現任の監査人以外の者を任命するまたは現任の監査人を再任しない決議のためには、特別な通知が必要で(211条(1))、当該通知を受けた監査人は、株主に対して意見を表明することを要求できます。会社は、当該要求を受けた場合は、期限を過ぎたものでない限り、株主総会の招集通知において、意見がなされた旨およびその内容を記載しなければなりません(同条(3))。

監査人の報酬は、原則として株主総会の決議又は株主総会で決定された方法により決定されますが、監査人が取締役会又は政府により任命された場合は、それぞれ取締役会又は政府により決定されます(210条(10))。

      3. 監査人の権限および責務

 会社の監査人は、会社の財務諸表、帳簿及び帳票をいつでも閲覧できる権利を有し、また、会社の役員に対して、監査人の職務遂行のために必要な情報及び説明を求める権利を有します(213条(1))。監査人は会社が作成する決算書や会計帳簿などの監査を行い、監査報告書を作成し、貸借対照表や損益計算書とともに、株主総会に提出し、決算書について監査人としての適正な意見を表明しなければなりません(同条(3))。