マレーシアにおいては、日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在しません。マレーシア会社法(Companies Act 2016)では、会計面での監査を行う監査人を規定しています。
(1) 監査人の選任
マレーシアでは、原則として全ての会社は最低1名の監査人を選任し、会社の会計を監査させなければなりません。
会社は、各会計年度に監査人を選任しなければならず(会社法267条1項及び271条1項)、株主総会普通決議により選任されます(会社法267条4項及び271条4項)。新しく設立された会社の場合は、公開会社であれば年次株主総会の前に(会社法271条2項)、非公開会社であれば最初の財務諸表を会社登記官に提出する30日前に(会社法267条3項)、取締役が監査人を選任する必要があります。
(2) 監査人の権限・義務
コモンロー上、監査人は、能力及び注意力のある監査人が用いると考えられる技量及び注意を用いなければならならないとされます。また、会社法上も監査人は会社に対して以下の義務を負っています。
監査人は、決算報告書及び会社の会計及び決算報告書に関する記録について株主に報告しなければなりません(会社法266条1項)。公開会社の場合、監査済会計書類は、年次株主総会で審議される必要があり、非公開会社の場合は、会計済監査書類は株主に回付されるか、又は株主総会で審議される必要があります(同項)。
なお、会社法266条7項により、監査人は自己が関係する議案について、株主総会に出席して発言する権利を有しています。
また、会社法285条1項は、公開会社の監査人に対して年次総会に出席する義務を課しています。監査人は、総会において、会計書類について株主の質疑に応答する必要があります(同項)。非公開会社については、年次総会は開催されませんが、株主総会において会計書類の監査に関する審議がされる場合、監査人は出席する義務を負います(会社法285条2項)。
(3) 監査人事務所
会社法264条4項に基づき、会社は事務所(firm)を監査人として選任することが認められています。事務所を監査人とする場合、選任時に当該事務所のパートナーだった者を監査人に選任したのと同等の効果を有します(会社法264条6項)。したがって、事務所のパートナー全員が監査人として承認され、かつ、欠格事由に該当しないことが必要となります。
また、会社はLLP(Limited Liability Partnership)を監査人として選任することも可能です(同条7項)。