【日本の監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限 】

 監査役は、一般的には「取締役の職務の執行を監査する業務監査」の権限を有します(会社法381条1項(以下、「会社法」省略します))が、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。監査役の設置義務や、監査権限の範囲などは、会社の形態によって異なる定めがおかれています。

  1. 監査役の設置義務

 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(それぞれ監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)では、監査役を置かなければならないとされています(327条2項本文、同条3項)。ただし、取締役会設置会社であっても、公開会社でない会計参与設置会社では、監査役を置く必要はありません(同条2項ただし書)。なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役は置くことができません(同条4項)。

  1. 監査役の選任及び解任

 監査役は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)で選任されます(329条1項、309条1項、341条)。ただし、解任の場合には、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数)によらなければなりません(339条1項、309条2項7号)。

  1. 監査役の資格等

 監査役の資格等については取締役の規定が準用されており(335条1項)、以下に該当する場合は、監査役となることができません。

  1. 法人(331条1項1号)
  2. 会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法に規定されている罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(同項3号)
  3. (b)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)(同項4号)
  4. 成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合は、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(331条の2、1項)
  5. 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(同条2項)

 監査役の任期は、基本的に、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終の定時株主総会の終結の時までですが(336条1項)、公開会社でない株式会社において、定款によって、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条2項)。 

  1. 監査役の権限

 監査役は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。また、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができ(381条2項)、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。

 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(385条1項)。

 その他、会計監査人が、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったときや会計監査人としてふさわしくない非行があったとき、心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、当該会計監査人を解任することができます(340条1項)。

  1. 監査役の義務

 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に報告しなければなりません(382条)。また、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(383条1項)。さらに、監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(384条)。