バングラデシュでは、電子署名について、情報通信技術法(Information & Communication Technology Act 2006 (以下「ICT法」という)、情報技術規則(認証機関)(Information Technology (Certifying Authority) Rules 2010)、国家情報通信技術政策(National Information and Communication Technology Policy 2018)、認証機関向けの電子署名ガイドライン(E-Sign Guidelines for the Certifying Authority 2020)等にて規定しています。
- 電子署名の定義
ICT法の2条(1)では、電子署名は、署名者に独自性を加え、署名及びその後データに加えられた変更を識別することができる電子形式のデータであると定義しています。
2. 電子署名の登録
バングラデシュで電子署名を使用するには、ICT法36条に従って、認証機関から電子署名証明書を取得する必要があります。電子署名サービスの利用を希望する者は、パスポート サイズのカラー写真2枚、IDカードまたはパスポートの認証済みの写し、および住所を証明する書類を認証機関に提出し、アカウントを開設しなければなりません。申請内容を確認した後、認証機関は5~7営業日以内にアカウントを開設し、署名者に暗号トークンとソフトウェアアクセスを提供します。アカウントを設定した後、署名者はソフトウェアをダウンロードして PIN を受け取ります。
3. 手書き署名が求められる場合
バングラデシュでは、法律により電子的に署名または締結できない文書や契約があり、署名する者が政府職員に対面することや、手書きの署名とともに拇印が求められる文書として、i) 遺書、ii) 委任状(Power of Attorney)、iii) 不動産に関連する売買契約、iv) 印紙税が支払われる契約、v) 公証人の前で署名および/または立会いが必要な書類、vi) 宣誓供述書コミッショナーの前で宣誓する必要がある法的手続きに関する文書が挙げられます。
4. 実務における電子署名の利用状況
バングラデシュでの会社設立や事業を管理する政府機関である商業登記所(RJSC)は、電子署名を受け入れており、ウェブサイトに情報が提供されています。しかしながら、実務において、電子署名の普及は限定的で、多くの場合、電子署名は「スキャンした署名」という意味で解釈されています。