バングラデシュでは、労働法および労働規則にて、社会保障について規定されています。
- 民間企業の労働者のための積立基金(Provident Fund)
労働法264条に積立基金について定められています。民間セクターの企業は、労働者の利益のために、積立基金を設立することができます。積立基金の設立は、使用者の義務でないものの、全労働者の4分の3以上の書面による要望を受けた場合は、設立しなければなりません。また、要望を受けた日から6か月以内に同基金の規約を定め、開始しなければならないと規定されており、会社独自の規約を定めることが出来ますが、法律より労働者に不利な規定は定めることができません。
積立基金が設立されている場合、別段の合意がない限り、勤務期間が1年以上の無期雇用労働者は加入しなければならず、同基金への積立金は、労働者の基本給月額の7~8%相当額と規定されており、使用者は、労働者と同額を積み立てるほか、同基金の維持管理費を負担しなければなりません(同条(13))。積立基金に加入している労働者は、退職の理由に関わらず、使用者の負担分を含む給付金を受け取る権利があり(労働法第29条)、使用者の義務である同基金の積立金の支払いや手数料のために、労働者の賃金や手当を減額することはできません(労働法第272条)。
- 労働者企業利益参加基金(Workers Participation Fund)および労働者福祉基金(Workers Welfare Fund)
- 概要
労働法234条に労働者企業利益参加基金および労働者福祉基金(以下、両基金をあわせて「基金」という)について定められています。同基金は、会社の利益を労働者に還元するために設置されるもので、労働法にて定められる要件を満たした会社は、基金の設置義務が生じます(労働法234 条(1)(a))。基金の設置義務がある会社は、前年度の純利益(net profit)の5%を、基金に支払わなければなりません。
- 適用範囲(労働法232 条)
a) 会計年度最終日に払込資本額が1,000 万タカ以上、または、b) 会計年度最終日に固定資産価値が2,000 万タカ以上のいずれかを満たす会社または事業場に適用されます。
なお、政府は規則にて、100%輸出志向産業及び100%外資企業について、基金の規約、基金管理委員会の規約、助成金額の決定、集金の方法、基金の利用及び関連するその他の付随事項に必要な規定を定めなければならないとされています。
- 経済特区
経済特区では、バングラデシュ経済特区(労働者福祉基金)政策((Bangladesh Economic (Workers Welfare Fund)Policies, 2017)にて、経済特区庁は、同区の労働者の福祉のために福祉基金を設立しなければならない旨が規定されています。掛金は、雇用人数によって異なり、企業が支払います。
- 特別社会保障基金(Special Security Fund)の設置
2022年の労働規則の改正で、請負業者(派遣会社)に「特別社会保障基金」の設置が義務付けられました(17条)。すべての請負業者は、ライセンスを取得してから 6 か月以内に、会社名で銀行口座を開設し「労働者社会保障基金」の名称で、全労働者の基本給 1 か月分に相当する額を当該銀行に預金しなければなりません。翌年からは、毎年、2年目以降の労働者は基本給の15%、新規採用の労働者は基本給1か月分を預金します。
- 団体保険
現行の保険法に従い、100人以上の無期雇用労働者を雇用している事業所は、団体保険に加入しなければなりません。団体保険は永久労働不能および死亡の場合に給付金が支払われます(労働規則98条(1))。保険料は使用者が支払う必要があり、労働者の賃金から控除することはできません(同条(4))。労働者が死亡した場合は、会社が保険金受給の手続きを行い、受取人に直接支払われるよう手配しなければならないと規定されています(労働法99条(2))。なお、中央基金が設立されている場合は、団体保険の設置義務はない。