「タイの職場の労働安全衛生に関する法制度の概要」

(1) 労働安全衛生環境法

タイでは、職場における労働安全衛生に関する法律として、労働安全衛生環境法(Occupational Safety, Health and Environment ACT, B.E. 2554 (A.D. 2011))があります。同法では、使用者の労働安全衛生環境に関する管理・運営等の義務、職場における安全衛生基準、安全管理者の任命等について規定されています。

(2) 使用者の義務

使用者は、被雇用者の生命、身体、精神及び健康に危害が及ばないように、被雇用者の業務を支援し、促進することを含め、会社及び被雇用者を安全で衛生的な労働条件及び環境を提供し、維持する義務があります(同法6条1項)。具体的には下記のほか、使用者は、被雇用者に対する業務の危険を知らせる通知、マニュアルの配付(同法14条)労働安全衛生環境に関する研修の実施(同法16条)、危険を警告する表示の掲示(同法17条)等を行う必要があります。

(3) 安全衛生基準に関する省令

使用者は、省令で定める基準に従って、労働安全、健康及び環境を管理及び運営しなければならないとされています(同法8条1項)。同項に基づく省令は、職種によって安全衛生基準を定めており、安全装置の設置、従業員の安全服の着用、作業機器の基準等が定められています。同条に基づく省令の例として、機械、クレーン及びボイラーに関連する省令、電離放射線に関連する省令、建設作業に関連する省令、潜水作業に関連する省令、熱、光及び騒音に関連する省令、有害な化学物質に関連する省令等があります。

(4) 安全管理者の任命

使用者は、省令で定める基準、方法及び条件に従って、事業所内の安全を運用するために、被雇用者から任命した安全管理者、人員・作業ユニット又は人員のグループを定めなければならないとされています(同法13条1項)。