「マレーシアの職場の労働安全衛生に関する法制度の概要」

マレーシアでは、労働安全衛生に関する法令として労働安全健康法(Occupational Safety and Health Act 1994)があります。

(1) 概要

 労働安全健康法は、職場における人の安全、健康、福祉の確保を目的とする法律です。同法は、Schedule1が定める以下の事業に対して適用されます(労働安全健康法1条2項)。

  1. 製造業
  2. 採掘・採石業
  3. 建設業
  4. 農業、林業、漁業
  5. 公益事業(電気、ガス、水、衛生サービス)
  6. 運送業、倉庫業、通信事業
  7. 卸売・小売
  8. ホテル・レストラン
  9. 金融、保険、不動産、事業サービス
  10. 公的サービス・法定機関

(2) 適用対象

 使用者が直接雇用している労働者のほか、その使用者が監督する職場で働く下請業者の労働者等も労働者に含まれます(労働安全健康法3条)。 

(3) 使用者の義務

 労働安全衛生法15条は、全ての使用者は雇用する全ての労働者に対し、職場の安全、健康及び福祉を確実なものとしなければならないと規定しています。この使用者の義務には、以下のような内容が含まれます(労働安全健康法15条2項)。

  1. 安全であるように職場における設備又はシステムを提供・維持する
  2. 設備及び物資の使用、運用、取扱い、貯蔵及び輸送の安全性を確保する
  3. 安全性を確保するために必要な情報、指示、訓練及び監督を提供する
  4. 職場及び職場への出退勤の方法を安全なものとする
  5. 労働者の福祉のために適切な設備を確保する

 5名以上の労働者を有する使用者は、労働者の職場における安全及び健康に関する一般指針を作成し、労働者に対し周知しなければなりません(労働安全健康法16条)。

 また、いかなる使用者も、以下の理由によってその労働者に対する解雇や役職の不利益変更等の行為をとることはできません(労働安全健康法27条1項)。

  1. 安全性を欠く又は健康を害すると考える問題について苦情を申し立てた
  2. 安全・健康委員会の構成員である
  3. 安全・健康委員会としての役割を果たした

 同条に違反した使用者は、RM1万を超えない若しくは1年を超えない禁固又はその両方が科される可能性があります(同条3項)。

 使用者は、職場で発生した又は発生する可能性のある事故、危険な出来事、職務上の中毒又は職務上の疾病を最寄りの労働安全健康局に通知しなければなりません(労働安全健康法32条1項)。