「日本の職場の労働安全衛生に関する法制度の概要」

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)は、労働基準法(第22年法律第49号)と相まって、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています(第1条)。この目的を達成するための施策として、事業者対して労働災害防止計画の立案と安全衛生管理体制の確立を義務付けるとともに、労働者の健康保持推進のための措置の実施を求め、労働者への危険や健康被害を最小化するために特定の機械等・危険物・有害物を規制し、免許取得者のみが取り扱うこととし、違反事業者への罰則が規定されています。以下では、これらのうち、事業者の義務として規定されている主な項目を紹介します。

  1. 安全衛生管理体制

 作業内容や現場の規模によって、総括安全衛生管理者、産業医、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者、衛生推進者、作業主任者等の人員と安全委員会・衛生委員会の設置が義務付けられています。

労働者に対する安全衛生教育として、労働災害防止業務従事者能力向上教育(第19条の2第1項)、雇入時及び作業内容変更時の安全衛生教育(第59条第1、2項)、新任職長等に対する安全衛生教育(第60条)、危険有害業務に対する特別教育及び安全衛生教育(第59条第3項、第60条の2第1項)を事業者は実施する義務があります。

 また、仕事の一部を請負に出している場合、業種にかかわりなく、最初に注文者から仕事を引き受けた元方事業者には、関係する請負人や請負人の労働者が関係法令に違反しないように指導し、違反する場合には是正のため必要な指示を行うことが義務付けられ(第29条)、更に、建設業及び造船業の元方事業者には、協議組織の設置・運営、作業間の連絡・調整、作業場の巡視、請負人への労働者の安全・衛生のための教育に対する指導・援助等、労働災害を防止するために必要な措置をとること(第30条第1項)、下請に対する注文者として、請負人に使用させる設備等の災害防止のための措置をとること(第31条第1項)等、が義務付けられています。

 2.労働者の健康保持推進

 作業環境測定を実施し(第65条第1項)、その結果の評価に基づいて必要な場合には設備の整備等の適切な措置を講じて記録化(第65条の2)することが事業者には義務付けられています。

 また、潜水業務等の健康障害のおそれがある業務に従事する労働者については法定の作業時間を超えて稼働させることは禁じられています(第65条の4)。

 常用雇用者の雇入時と年1回の健康診断、特定業務従事者や海外派遣労働者に対する定期的な健康診断の実施(第66条第1~3項)、心理的な負担に関するストレスチェックの実施(第66条の10第1項)、健康診断やストレスチェックの結果を受けて従業員の健康保持に必要な措置の実施(第66条の5、第66条の10第6項)、等が事業者に義務付けられています。また、省令で指定される伝染病等に罹患した労働者の就業を禁止しなければならず(第68条)、受動禁煙の防止のための必要な措置については努力義務が課されています(第68条の2)。

   3.危険防止・健康障害防止

 事業者には、機械、爆発性・引火性のある物、電気・熱等による危険の防止(第20条)、採掘・砕石等の作業方法から生じる危険や墜落・土砂等の崩壊のおそれがある場所等に関連する危険の防止(第21条)、原材料、ガス、放射線、騒音、計器監視等の作業、廃棄・残滓物等による健康障害の防止(第22条)ための必要な措置を講じる義務があります。例えば、ボイラーやクレーン等の特定の機械については、使用に際しての検査が義務付けられる他、検査証のない機械の譲渡・貸与が禁止されています。黄燐マッチ等政令で定められる重度の健康障害のおそれがある有害物の製造・輸入・使用等が禁じられる(第55条)他、爆発性・発火性のある危険有害物質については内容の表示等が義務付けられています。更に、労働災害防止のため、特定の機械の設置や大規模な建設作業等の一定の業務や工事等は監督官庁への届出が義務付けられています(第88条第1~3項)。

 また、労働者の就業場所の保全・清潔等の健康保持のための措置(第23条)等を講じることが事業者に義務付けられています。

   4.罰則

 労働安全衛生法違反の罰則としては、懲役(最高7年)、罰金(最高300万円)、過料(最高50万円)が定められており、その一部については事業者である法人への両罰規定も設けられています(第122条)。

 具体的には、労働災害の発生等を端緒として、労働基準監督機関の調査が行われ、労働安全衛生法違反の疑いがある場合には、被疑事件として捜査が開始され、両罰規定が適用されるときは法人代表等の事情聴取も行われて、検察庁へ事件が送致され、捜査結果を踏まえて公訴提起に進み、裁判所で判断されます。