(1) 労働安全衛生に関する法規制
労働安全衛生に関して、憲法( Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)は、使用者は、その事業の性質に応じて、その事業所における安全衛生に関する法令上の規定を遵守し、機械、器具および用具の使用における事故を防止するための適切な措置を採用するとともに、労働者の健康および生命を最大限に保障することと規定しています。また、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)においても、業務上の事故や疾病を防ぐために、安全、健康、労働環境に関する規則や公式メキシコ規格に従って、工場、作業場、事務所、敷地、その他業務を行う場所を設置、運営し、労働当局が定める予防・是正措置を採用することと、使用者の義務が規定されています。
詳細な労働安全衛生規制に関しては、労働安全衛生に関する規則(Reglamento Federal de Seguridad, Higiene y Medio Ambiente de Trabajo、以下、「規則」といいます。)および公式メキシコ規格(Norma Oficial Mexicana、以下、「NOM」といいます。)において定められています。紙幅の関係上、各規制の詳細については割愛しますので、個別の事業所に適用される労働安全衛生の法規制に関しては、弊事務所にご相談ください。
(2) 労働安全衛生に関する規則の概要
労働安全衛生に関する規則において、使用者は、以下の義務を負うとされています。
- 労働安全衛生診断、ならびに規則およびNOMで要求されるリスクの調査・分析を行うこと。
- 労働安全衛生診断に基づく労働安全衛生プログラムを作成すること。
- 平常時および緊急時の活動や作業工程の実施のための特有のプログラム、マニュアル、手順を作成すること。
- 安全衛生委員会(Comisión de Seguridad e Higiene)を設置し、その運営を円滑にすること。
- 予防的労働安全衛生サービスを提供し、また法律に従い産業医サービスを提供すること。
- 職場の見やすい場所に通知や標識を設置し、労働災害リスクを知らせ、警告し、防止すること。
- 事業所の設置に際しては、規則およびNOMに示された労働安全衛生対策を、作業内容や作業工程の性質に応じて適用すること。
- 職場の環境条件を暴露限界値以内に維持するために、職場環境における汚染物質に対する認識、評価、制御を行うこと。
- 規則およびNOMにより必要とされる業務上の被曝者に対する健康診断の実施を命じること。
- 作業者がさらされる労働災害リスクに応じて、個人用保護具を提供すること。
- 業務に関連する労働災害リスクについて、労働者に知らせること。
- 労働者が行う活動に応じて、危険防止や緊急時の対応について教育・指導を行うこと。
- 安全衛生委員会のメンバーおよび予防的労働安全衛生サービスを提供する労働者を訓練し、必要に応じて社内の産業医学予防サービスの責任者の交代を支援すること。
- 規則およびNOMの定めに従い、危険が伴う活動または作業に対してその実施を許可すること。
- 規則およびNOMで定められた管理記録を、紙または電子媒体で保管すること。
- 発生した労働災害について、労働福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)または社会保障機関に通知すること。
- 業務上の事故および疾病による死亡を労働福祉省に通知すること。
- 圧力容器、超低温容器、蒸気発生器またはボイラーの取扱いに関する届出を行うこと。
- 労働安全衛生に関する規則およびNOMの遵守に関する意見、結果報告、適合証明書を取得すること。
- 請負業者がその施設内で作業を行う際に、規則およびNOMに定められた労働安全衛生対策を遵守するよう監督すること。
- 労働安全衛生に関する規則の遵守を徹底するため、労働当局による監査を許可し、協力すること。
- その他、法律の規定に従うこと。
また、規則は、次の個別的な場合における使用者の義務も定めています。
- 職場の建物等
- 火災の予防
- 機械や設備等の使用
- 材料の取り扱い・輸送・保管
- 危険な化学物質の取扱い・輸送・保管
- 自動車の運転
- 高所作業
- 閉鎖的空間における就業
- ボイラー等の取扱い
- 静電気の管理および大気放電の影響の防止
- 溶接および切断の作業
- 電気設備の保守
- 職場での騒音
- 職場での振動
- 職場の照明
- 電離放射線源の使用・取扱い・保管・輸送
- 非電離性電磁波を発生させる職場
- 極端な高温または低温の熱条件にさらされる場合
- 異常な気圧・水圧にさらされる場合
- 健康に影響を及ぼす可能性のある化学物質にさらされる場合
- 健康に影響を及ぼす可能性のある生物学的物質にさらされる場合
- 職場の人間工学的危険因子
- 職場における心理社会的リスク要因、など
(3) NOMによる規制
NOM-001-STPS-2008 | 職場の建物、構内、施設、敷地における安全基準 |
NOM-002-STPS-2010 | 職場の火災予防に関する安全基準 |
NOM-003-STPS-1999 | 農作業における農薬や肥料の使用に関する労働安全衛生基準 |
NOM-004-STPS-1999 | 職場で使用される機器の安全装置及び保護システム |
NOM-005-STPS-1998 | 職場における危険な化学物質の取り扱い、輸送、および保管における安全および衛生基準 |
NOM-006-STPS-2014 | 職場における危険な化学物質の取り扱い、輸送、および保管における安全および衛生基準 |
NOM-007-STPS-2000 | 農業における施設、機械、設備、工具に関する安全基準 |
NOM-008-STPS-2013 | 木材の保管や加工を含む木材の取扱いに関する安全衛生基準 |
NOM-009-STPS-2011 | 高所作業における安全基準 |
NOM-010-STPS-2014 | 作業環境を汚染する化学物質の特定、評価、および管理に関する基準 |
NOM-011-STPS-2001 | 騒音が伴う職場の安全衛生基準 |
NOM-012-STPS-2012 | 電離放射線源を扱う職場の安全衛生基準 |
NOM-013-STPS-1993 | 非電離放射線が発生する職場の安全衛生基準 |
NOM-014-STPS-2000 | 異常な環境圧力下での労働安全衛生基準 |
NOM-015-STPS-2001 | 高温もしくは低温下の労働安全衛生基準 |
NOM-016-STPS-2001 | 鉄道の運営管理における安全衛生基準 |
NOM-017-STPS-2008 | 職場における個人用保護具の選択、使用、および取り扱い基準 |
NOM-018-STPS-2015 | 職場の危険な化学物質によるリスクの識別と伝達のための統一システム |
NOM-019-STPS-2011 | 安全衛生委員会の組成、構成、運営に関する基準 |
NOM-020-STPS-2011 | 圧力容器、低温容器、蒸気発生器またはボイラーの取扱いに関する安全基準 |
NOM-022-STPS-2015 | 職場における静電気に関する安全基準 |
NOM-023-STPS-2012 | 地下鉱山及び露天掘鉱山における労働安全衛生基準 |
NOM-024-STPS-2001 | 振動に関する労働安全衛生基準 |
NOM-025-STPS-2008 | 職場の照明に関する基準 |
NOM-026-STPS-2008 | 安全衛生における色及び標識、並びに導管内流動体に関するリスクの特定 |
NOM-027-STPS-2008 | 溶接及び切断作業における労働安全衛生基準 |
NOMとは人々の安全や健康、動植物、環境の保護、安全な作業環境の確保などを目的とする法的強制力のある規格基準です。現在、労働安全衛生に関して有効なNOMは以下の通りです。
また、2021年1月12日、テレワークに関する規制の追加等、労働法の改正が施行されました。これに基づき、2022年7月15日にテレワークにおける安全衛生に関する基準を定めるNOMの草案であるPROY-NOM-037-STPS-2022が公表され、これに対するパブリックコメントの募集が行われました。今後、寄せられたパブリックコメントの内容を踏まえ、最終的なNOMが発行される予定です。