「タイの労働災害に関する法制度の概要」

(1) 労働災害に関する法制度について

労働災害が発生した際の法律として、労働安全衛生環境法(Occupational Health and Safety and Environment Act, B.E2554(A.D.2011))および労働者災害補償法 (Workmen’s Compensation Act, B.E. 2537 (A.D.1994))があります。労働安全衛生環境法では、労災事故後の使用者の義務を定め、労働者災害補償法では、労災基金や労災補償金の支給について定めており、業務に起因した死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合に、従業員が受け取ることのできる補償金等について規定されています。

(2) 労働災害として対応が必要となる場合

使用者は、業務に起因した従業員の死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合の他、火災等により事業所が危険な状態に陥った場合や、それにより負傷者等が発生した場合に、以下の責任を負うこととされています。

(3) 労災事故が発生した場合の使用者の義務

使用者は、労働災害により従業員が死亡した場合、直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で通知をし、従業員が死亡した日から7日以内に労働災害の内容及び原因を書面で報告しなければなりません(労働安全衛生環境法34条1項)。

火災や爆発、流出物の発生やその他の重大な事故の発生の結果、事業所が損害を受けたり、生産を停止しなければならない場合、または人がいる事業所内が危険な状態に陥った場合や、負傷者等が発生した場合、使用者は直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で当該事実を通知しなければなりません。また、事故発生から7日以内に、当該事故等の原因及び再発防止措置を書面で報告しなければなりません(同条2項)。

従業員が労働災害補償法所定の危機に直面し、または病気に罹患した場合、使用者は7日以内に社会保険事務所に通知し、その写しを安全検査官に送付しなければなりません(同条3項)。

(4) 労働災害が発生した場合の給付

従業員が生命の危険または疾病に罹患した場合、使用者は直ちに従業員の治療を手配する必要があります。また、省令規定の範囲内で医療費やリハビリ代、葬祭費を使用者が負担することとなり(労働者災害補償法13条、15条、16条、17条)、労働災害に遭った従業員または当該従業員の親族に対して、毎月補償金を支払わなければならないとされています(同法18条)。

一般的に、使用者は補償基金の規定に従って従業員に補償金を支払う必要がありますが、従業員が酩酊物質やその他の中毒性物質(アルコールや大麻等)を摂取したため意識をコントロールできない場合、または従業員が自ら労働災害を招いた場合や第三者に発生させるよう仕向けた場合には、使用者は補償金を支払う必要はありません。