「マレーシアの証券市場の構造と上場基準の概要」

(1) 証券市場の概要

マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)には、メインマーケット(Main Market)、ACEマーケット(ACE Market)、LEAPマーケット(LEAP Market)の3つの証券市場があります。3つの証券市場には、それぞれ異なる上場基準が定められています。

  • メインマーケットは、質、規模、及び運用の面で基準を満たしている主に大企業が対象となる市場です。対象となる会社は通常、長期にわたって優れた営業実績と収益性を示しています。メインマーケットにおいて上場するには、一定の利益実績又は規模に達していることを証明する必要があります。
  • ACEマーケットは、高い成長見通しを持つ主に中小企業を対象としたスポンサー主導の市場です。以前はMESDAQ市場として知られていた同市場では、スポンサーにより、事業の見通し、企業行動、内部統制の妥当性等の様々な側面を考慮して、上場における適合性を評価します。
  • LEAPマーケットは、主に新興企業を対象としたアドバイザー主導の市場です。同市場は、資本市場を通じて資金調達へのアクセスと可視性を高めることを目的としています。同市場に上場するために、営業実績又は財務実績を証明する必要はありません。

(2) メインマーケットの上場基準

証券市場によってそれぞれ上場基準が異なるため、以下では、主にメインマーケットの基本的な上場形態であるプライマリー上場の基準に絞って解説します。上場基準としては、定量的及び定性的基準の2種類の基準があります。また、外国企業及び鉱物石油ガス(MOG)会社は、追加の基準を満たす必要があります。

なお、セカンダリー上場を希望する外国企業は、特定の定性的基準を満たすだけでよく、定量的基準を満たす必要はありません。セカンダリー上場とは、マレーシア証券委員会によって指定された外国証券取引所の主要市場に既にプライマリー上場している外国企業に認められたプライマリー上場以外の方法により上場する形態をいいます。

(3) 定量的基準(Quantitative criteria)

コア事業がインフラ事業に関係しない会社は、利益又は時価総額基準のいずれかを満たす必要があります。インフラ事業を行う会社は、インフラ事業会社基準を満たさなければなりません。

プライマリー上場を希望する企業は、公開スプレッド要件を満たす必要があります。公開スプレッド要件は、流通株式数が当該会社の総株式数の25%以上及び100株以上を保有する1,000人以上の一般株主を要するとされています。

2021年3月1日以降、マレーシア証券取引所は、以下の定量的及び定性的基準を満たしている場合は、メインマーケットの公開スプレッド要件を緩和することを検討する場合があります。

また、公開スプレッド要件の株式の50%は、ブミプトラの投資家へ割り当てられる必要があります。もっとも、MSCステータス、BioNexusステータスを持つ会社及び主に外国を拠点とする事業を行う会社は、この要件が免除されます。
(4) 定性的基準(Qualitative Criteria)
プライマリー上場を求める国内外の会社は、スポンサーシップ、コア事業、経営の継続性と能力、株式のモラトリアム、関連当事者との取引及び財務状況と流動性に関する定性的基準を遵守する必要があります。
(5) 外国企業のプライマリー上場の追加基準
上場を希望する外国企業は、特にコーポレートガバナンス、株主の保護、買収及び合併の規制に関して、会社法及びその他の法律がマレーシアの法律と同等の法域に設立されなければなりません。当該法域が同等の基準を有していない場合、会社の定款を変更することによって基準を満たすことは可能です。また、目論見書を発行する前に、必要に応じて、コア事業を行う法域のすべての関連規制当局の事前承認が必要です。その他にも、2016年会社法に基づいて外国企業として登録されている必要がある等の基準があります。