「フィリピンの不法行為法の概要」

  1. フィリピンにおける不法行為論

フィリピンにおいて、「不法行為」という概念は明確に定義されておらず、“quasi-delict”という概念が規定されています。以下“quasi-delict”を便宜上「不法行為」といいます。

フィリピンの法令において、「不法行為」は、請求主体が、被った損害について救済を受けることができるものとされています。

  1. 不法行為の構成要件

ある行為が不法行為を構成する要件として、民法第 20 条に基づき、以下の要素が挙げられています。

  1. 法的な権利および義務
  2. 主体の義務違反行為
  3. 損害行為
  4. 因果関係
  5. 損害の発生

義務違反行為については、作為的な行為のみならず、不作為による義務違反行為も含まれる場合があります。 また、不法行為に基づき損害賠償請求されるケースとしては、使用者による責任を追及される場合もあるため注意が必要です。

  1. 賠償の範囲

フィリピンにおいて、損害賠償の範囲は、民法典において以下の6種類の損害賠償が定義されています。

  1. Actual or Compensatory Damages

証明された金銭的損失の補償として与えられる損害賠償を指します。

  1. Moral Damages

肉体的苦痛、精神的苦痛、傷ついた感情、道徳的ショック等によって与えられる損害を指します。

  1. Nominal Damages

原告の権利の侵害または侵害を認識するために裁判所が認定する損害を指します。

  1. Temperate Damages

何らかの金銭的損失が生じたと認められるが、正確な損失額を証明できない場合に認められる損害を指します。

  1. Liquidated Damages

契約の当事者によって合意され、違反した場合に支払われる損害を指します。

  1. Exemplary or Corrective Damages

行動を是正するために課される損害賠償を指します。

 なお、弁護士費用と訴訟費用については、フィリピンにおいては一般的に、裁判費用を除き、特に懲罰的損害賠償が認められる場合、または、原告に対する法的根拠が明らかにない場合には、これらを回収することはできないとされています。もっとも、裁判所が正当かつ公平であると判断した場合には、弁護士費用や訴訟費用の支給を認めている場合もあります。