「メキシコの不法行為法の概要」

(1) 関連する法令

メキシコでは、不法行為に関するルールは民法に規定されています。メキシコにおける民法には、連邦民法(Código Civil Federal)と、各州が独自に定める民法があります。本ニュースレターでは、連邦民法に基づいて不法行為の概要を説明しますが、実際の事案においては、連邦民法や各州の民法などの中から適用される民法を確定する必要があります。

(2) 不法行為

連邦民法1910条は不法行為に基づく請求の根拠となる条文であり、不法に又は公序良俗に反して行動し、他人に損害を与えた者は、その損害が被害者の重過失の結果として生じたことを証明しない限り、それを回復する義務がある、と規定しています。同条の損害には、財産的損害と精神的損害が含まれます。

以上が、不法行為の原則的な規定ですが、賠償責任の範囲を加害者本人から拡げる規定も設けられています。たとえば、法人は、法人代表者(representante legal)がその職務を行うことによって生じた損害を賠償する責任を負うものとされています。その他、連邦民法には、使用者責任、動物の占有者の責任や共同不法行為について規定が設けられています。

メキシコでは、日本の製造物責任法のような特則はなく、製造物から生じた損害賠償を請求するには、加害者の過失の立証が必要になります。

不法行為に基づく損害賠償の訴えは、損害が発生した日から2年をもって効力を失うとされています。日本の民法と比べ時効消滅の期間が短いため、よりタイトな債権回収が求められます。

(3) 懲罰的損害賠償

米国の一部の州などでは、いわゆる懲罰的損害賠償が認められています。メキシコにおいては、懲罰的損害賠償を直接定めた規定はありません。しかし、裁判所は、将来、同様の行為を防止するために、有害な行為の抑止効果を賠償に加えるものとして、懲罰的損害賠償の概念を認めています。ただし、不法行為責任が発生するすべての場合に懲罰的損害賠償が加味されるわけではなく、裁判所は、行為の重大性が懲罰的損害賠償の制裁を正当化するほどに高度の社会的非難に値する場合にのみ懲罰的損害賠償を含めることができるとしています。