インドには、営業秘密の保護に関する法律はありません。したがって、営業秘密の漏洩について、刑事責任を定める特別の法令も存在しません。
営業秘密を保護するための手段として、秘密保持契約、雇用契約、研究開発契約等のそれぞれの契約において秘密保持条項を定めることが重要です。契約に規定された秘密保持条項に反して第三者に営業秘密を開示した場合は、契約法(Contract Act of 1872)に基づいて損害賠償請求をすることが可能です。裁判例では、営業秘密に該当するかどうかの判断において、当該情報が秘密であること(既に公知となっている等の事情がないこと)、情報の開示により損害が生じる又は競争相手が利益を得ること等の事情を考慮しています。
また、裁判例では、営業秘密の漏洩の差止めについても認められています。裁判所は、侵害の事実の有無、回復不能な損害、原告被告間の利益の比較衡量等の事情を考慮して差止を命じるかどうかを判断します。
なお、インド契約法においては、「ある者が合法的な職業、取引、又はあらゆる種類の事業を行うことを拘束されるあらゆる合意は、その限りにおいて無効である。」と規定しており、同法に基づき、原則、雇用契約期間中の競業避止義務は有効であるが雇用契約期間終了後の競業避止義務は原則として無効であると解釈されています。一方、雇用契約期間終了後に元従業員に顧客への連絡を禁ずる条項について適法であると判断した裁判例があることから、雇用契約期間終了後の秘密保持条項については合理的な範囲で認められると考えられます。