「マレーシアの営業秘密の保護に関する法制度の概要」

マレーシアでは、営業秘密の保護に関する一般的な法は存在せず、営業秘密はコモンロー及びエクイティによって保護されます。営業秘密が不法に開示された場合には、守秘義務違反として民事救済を図ることができます。営業秘密の漏洩に関する直接的な刑事責任を定めた法令等は特段存在せず、救済手段としては基本的には民事救済によることになります。営業秘密には、製法、方法、技術、製造費用、顧客リスト、事業計画等が含まれるとされています。保護の対象となる営業秘密は、原則として秘密となっている情報のみであり、公共財となっている一般的な情報については保護されないものとされています。

(1)守秘義務違反が認められる要件

マレーシアでは、判例上、従業員には使用者に対する忠実及び誠実の義務があるとされており、この義務には、使用者の同意なしに、雇用の過程で得た機密情報を使用または開示しない義務(守秘義務)が含まれています。

 次の3つの要件が満たされている場合に、守秘義務違反が認められることがイギリスの判例(Coco 対 AN Clark (Engineers) Ltd事件等)で明示されており、これはマレーシアでも適用されています。

  1. 機密性のある情報であること
  2. 守秘義務を負う状況下で情報が伝達されたこと(情報の機密性が従業員に明確に示されている必要があります。)
  3. 情報の無断使用があったか、それが予期されること

守秘義務は、通常、雇用関係において発生し、この義務は暗示であっても、明示であってもよいとされ、その雇用終了後にまで及ぶとされています。

しかし、使用者は従業員に対し、当該従業員の技術及び知識の一部となったものの使用を禁止できないとされています。

マレーシアの判例により、当該情報が企業秘密であるか又は一般知識及び技術であるかは、以下の要素により判断されます。

  1. 雇用の性質
  2. 情報の性質
  3. 使用者がその情報の機密性を強調したか
  4. 当該企業秘密が一般知識及び技術と区別できるものであるのか

(2)守秘義務違反が認められる場合の救済方法

 守秘義務違反が認められる場合には、損害賠償請求(Damages)(懲罰的損害賠償請求を含む)、差止命令(Injunction)、清算による償還(Account of profit)等が考えられます。

なお、差止命令が認められるためには、回復不能な損害があること、及び損害賠償請求のみでは救済として不十分であることを立証しなければなりません。