「タイの合併に関する法制度の概要」

(1) タイにおける合併の種類

タイでは、以前まで吸収合併は認められておらず、新設合併のみ認められていました。もっとも、近年のタイ民商法改正により、法律上、吸収合併も認められることになりました。

 以下ではタイにおける吸収合併の手続及びライセンス関係の承継の可否について、解説いたします。

(2) 吸収合併の手続

 タイにおいては、二社間での合併の合意後、以下の2つのステップを経ることで、吸収合併の効力を発生させることができます。

(ア) ステップ1

① 存続会社と消滅会社の双方において、合併を承認する株主総会を開催し、承認を得る。

② 反対株主に対して、株式の買取りを行う。

③ 承認決議後、14日以内に以下を行う。

  • DBD(商務省)での承認決議の登記
  • 決議日に会社記録に名前が記載されているすべての債権者に、異議申し立て期間を1ヶ月以内とする本件承認決議の通知を送付する。
  • 地元紙にて承認決議を行った旨の公告を行う。

④合併に反対する債権者がいる場合には、同債権者に対し、弁済または担保の提供を行う。

その後、ステップ1の完了により、ステップ2に進むことが可能となります。

(イ) ステップ2

① 合併会社の名称や目的、覚書、定款等を決定し、承認の決議を行う。

② 決議後、7日以内に、消滅会社および存続会社の取締役が合併会社の取締役に、事業、財産、会計に関する書類等の引継ぎをする。

③ 同株主総会の日から14日以内に合併を登記し、合併会社の覚書と定款をDBDに提出する。

(3) 許認可や従業員の承継

 タイでは、吸収合併が近年まで認められなかったという事情から、吸収合併とライセンスの承継については不透明な部分も多く、同じライセンスであっても、品目等によって承継の可否が異なる場合があります。そのため、自身のライセンスの承継の可否についてはライセンスの所轄官庁に確認する必要があります。

 また、従業員については、消滅会社から存続会社へ異動する場合、法律上、各従業員から個別の合意を得る必要があり、得られない場合には、当該従業員に対しては、解雇補償金の支払を行い雇用契約が終了することになります。