「メキシコの合併に関する法制度の概要」

(1) 定義

メキシコにおいて合併は「Fusión」として認識されていますが、その定義は明確に規定されていません。メキシコにおける会社法となるLey General de Sociedades Mercantilesにおいては、222条から226条において合併に関する規定が置かれており、これらから合併には次の2つの種類があると考えられています。

  1. Fusión por incorporación o absorción(吸収合併)

既存の一つ以上の会社を別の既存の会社に統合し、そこに権利義務を承継させることで構成される。統合された会社は消滅する。

  1. Fusión por integración o pura(新設合併)

2つ以上の会社が新会社を設立し、各々の権利義務のすべてを当該新設会社に承継させ、各会社は消滅することで構成される。

(2) 合併の流れ

合併は、会社の形態に応じた条件で、それぞれの会社において決定されなければならないとされており、株式会社においては、特別株主総会決議を要することとなります。

合併の合意は、商業登記簿(Registro Público de Comercio)に登記し、経済省(Secretaría de Economía)の電子システムにおいて公表しなければならず、また、合併の対象となる各会社は当該電子システムにおいて最新の貸借対照表を公表し、消滅会社は、債務を消滅するための方法も公表しなければならなりません。

合併の効力は、登記後3か月が経過した後でなければ生じないとされており、この期間中、合併する会社の債権者は、当該合併に対して異議を申し立てる司法手続きをとることができます。異議が申し立てられた場合、当該異議を却下する判決が確定するまで、合併は一時中断されることとなり、異議の申立てがないままにこの期間が経過したときは、合併が成立し、存続会社または合併により生じた会社が消滅会社の権利義務を承継することとなります。

なお、経済競争法(Ley Federal de Competencia Económica)の定めにより、企業再編等グループ企業間で行われる場合といった一部の例外を除き、次の基準に当てはまる合併は、連邦経済競争委員会(Comisión Federal de Competencia Económica: COFECE)に届出を行い事前に承認を得る必要があります。

  1. UMA*1日額の1,800万倍に相当する額以上の金額をメキシコに投資することを意味する行為又はその原因となる一連の行為
  2. メキシコでの年間売上高又はメキシコにおける資産が、UMA日額の1,800万倍に相当する額以上である経済主体の資産又は株式の35%以上を併合することを意味する行為又はその原因となる一連の行為
  3. UMA日額の840万倍を超える資産又は資本のメキシコでの併合で、メキシコで生じる年間売上又はメキシコ国内の資産が、共同又は個別にUMA日額の4,800万倍に相当する額以上で2つ以上の経済主体が関与する企業結合を意味する行為又はその原因となる一連の行為

*1 UMA日額は、2023年度(2023年2月から2024年1月)は103.74ペソ

(3) その他の手続

その他、合併後には、消滅会社の納税者登録(RFC)の抹消や、消滅会社が外資登録(RNIE)のある会社だった場合には、その登録の抹消など、各会社の事情に応じた手続きが必要となります。

また、労働者に係る手続としては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)において、Sustitución Patronal(雇用主の交代)と呼ばれるものが規定されています。会社の資産等の譲渡と併せて、これまでの使用者に提供されていた労働が譲渡後も継続する場合に活用することができます。従って、消滅会社での経済活動が、存続会社や新設会社において継続される場合であって、同じ労働力が用いられる場合、この手続をとり、雇用関係を継続させることができます。