「インドの名誉棄損に対する刑事告訴の概要」

(1) インド刑法における名誉棄損罪

 インド刑法(The Indian Penal Code, 1860)第21章499条に名誉棄損罪(Defamation)が規定されています。

 同条では、「話し言葉若しくは読まれることを意図した言葉によって、又は標識や目に見える表示によって、人の名誉を傷つけることを意図して、若しくはそのような評判がその人の名誉を傷つけることを知りながら、又はそう信じる理由があるにもかかわらず、そのような評判を作ったり、公表したりした者は、例外とされる場合を除き、その者の名誉を傷つけるものとされる。」と規定しています。また、同条は、会社や組織に対する非難であっても名誉棄損に該当し得ると規定しております。したがって、個人に対してではなく会社等の団体に対する行為であっても名誉棄損が成立する場合があります。例外的に、公表されることが公共の利益のためになる真実の適示であれば、その人物の名誉・評判を傷つけるものであっても名誉棄損とはなりません。

 名誉棄損罪が成立する場合、2年以下の禁固若しくは罰金、又はこれら両方が科されます(インド刑法500条)。

 また、名誉棄損であると知りながら若しくは名誉棄損と信ずるに足りる相当な理由がありながらそのような事実が記載された文書を印刷等複製した者や当該印刷物を販売した者も同様に2年以下の禁固若しくは罰金、又はこれら両方が科されます(インド刑法501条、同502条)。

(2) 名誉棄損罪の告訴手続

 インド刑事訴訟法(The Code of Criminal Procedure, 1973)第14章199条に名誉棄損に対する訴追に関する規定があります。

 同条では、インド刑法21章の名誉棄損に関する犯罪については、被害を被った者の告訴によらなければ裁判所は認知してはいけないと規定しています。そのため、基本的には名誉棄損の被害者から告訴することが必要となります。例外的に、被害者が18歳未満の場合、精神病等で告訴できない場合、又は地域の慣習やマナーにより公の場所に出頭することを強制すべきでない女性の場合には、他の者が当該被害者に代わり裁判所に許可を得て告訴することができます(インド刑事訴訟法199条1項)。