「マレーシアの名誉棄損に対する刑事告訴の概要」

(1) 刑法上の規定等

 マレーシアでは、名誉棄損(Defamation)は、刑法(Penal Code)21章、499条~502条に規定されています。刑法499条は、話し言葉若しくは読まれることを意図した言葉、又は標識や目視できる表現によって、その誹謗中傷が人の名誉を傷つけることを意図して、又はその誹謗中傷が人の名誉を傷つけることを知りながら、若しくはそう信じる理由がある者が、誹謗中傷を行い、若しくは公表した者は、原則として、名誉棄損をした者として罰せられる旨規定しています。

 また、同条は、故人に対する名誉棄損については、その故人が存命中であったならばその名誉を傷つけ、その家族又は近親者の感情を傷つけることを意図する場合、会社、団体又は個人の集合に対する誹謗中傷、代替案又は皮肉を込めた表現での誹謗中傷は名誉棄損に該当しうる等と規定しています。

 名誉棄損を行った者は、2年以下の懲役若しくは罰金、又はその両方が科せられます(刑法500条)。

 また、人の名誉を毀損する内容であると知りながら、またはそう信じるに足りる十分な理由がありながら、印刷又は刻印した者は、2年以下の懲役若しくは罰金、又はその両方が科せられます(刑法501条)。

 さらに、人の名誉を毀損する内容であると知りながら、その内容が印刷又は刻印された物を販売又は販売のために提供した者は、2年以下の懲役若しくは罰金、又はその両方が科せられます(刑法502条)。

 オンライン上のコメントに関する犯罪としては、通信・マルチメディア法(Communications and Multimedia Act 1998)233条が卑猥、虚偽、脅迫的又は攻撃的なコメント等をオンライン上で行った場合には、5万リンギット以下の罰金若しくは1年以下の懲役又はその両方及び判決確定後違反が1日継続するごとに1000リンギットの罰金が科されると規定しています。

(2)刑事訴訟法上の規定

警察署に対する情報提供については、刑事訴訟法(Criminal Procedure Code)107条に規定されています。同条(1)は、犯罪の実行に関するすべての情報は、警察署の担当官に対して口頭で提供された場合、その担当官またはその指示により書面に起こし、情報提供者に読み上げるとされています。作成された報告書には、情報提供者の氏名、住所及び情報を受け取った日時が記録され、情報提供者がこれに署名します。

また、同法107条に基づき、情報を提供した者は、情報を提供した警察署の担当官に対し、捜査状況の報告を求めることができます(同法107A条(1))。

 警察官は、不必要な遅滞なく捜査を完了する義務があり、捜査を行った警察官は、検察官が報告する必要がないと指示した犯罪ではない限り、同法107条に基づいて情報が提供された日から3か月が満了した日から1週間以内に、当該捜査に関する捜査書類とともに捜査報告書を提出する義務があります(同法120条(1))。

 刑事訴訟手続を開始する条件として、名誉棄損は、被害者又は検察官による申立て(Complaint)が必要であるとされています(同法131条)。申立てを受けた裁判官は、申立人を尋問し、尋問の結果、訴訟手続を行う十分な根拠がないと判断する場合には、その申立てを却下することができるとされています(同法135条(1))。