「バングラデシュの労務紛争解決手段の概要」

バングラデシュでは、2006 年バングラデシュ労働法(以下「労働法」という)と、EPZ に適用される EPZ 労働法にて、労務紛争解決について定められています。

(1) 2006 年バングラデシュ労働法

労働者・使用者は、労働法に基づく権利について争いがある場合、書面において相手に通知しなければなりません(210条1項)。本通知を受領して15日以内に、使用者と労働者との間で会議を開く必要があります。

(a) 調停・仲裁手続

会議が開かれない場合、又は、最初の会議から1か月経過しても和解に至らない場合は、調停手続きを申し立てることができます(210 条 4 項)。調停に付された場合、10 日以内に調停が開始されます(同条 6 項)。調停による和解が 30 日以内に成立しない場合、調停人は、当事者に対し、仲裁に進むよう説得し、両当事者が仲裁に合意した場合、調停を仲裁に付するよう請求します(同条 9 項,同条 12 項)。

仲裁に付された場合は、30 日以内に、仲裁人が裁定を下さなければなりません(同条 14 項)。裁定は最終的なものとし、上訴はできません(同条 16 項)。

(b) 労働裁判所による手続き

各当事者は、労働裁判所に権利の執行を求めて訴えることができます(213 条)。労働裁判所は、訴訟が提起されてから 10 日以内に、相手方に供述書または反論書を提出するよう指示します(216 条 3 項)。相手方が、定められた又は延長された期間内に供述書または反論書を申し立てなかった場合、当事者の一方だけで審問し、処理されます(同条5項)。相手方が審理に欠席した場合も同様です(同条8項)。労働裁判所は、当事者が書面にて延長に合意しない限り、訴訟が提起されてから 60 日以内に判決、決定または裁定をします(同条 12 項)。

労働裁判所の判決に異議がある場合は、60 日以内に労働上訴審判所に訴訟を提起することができ、労働上訴審判所の決定が最終判決となります(217 条)。審理については、民事訴訟法の規定に従います(218 条 7 項)。労働上訴審判所は、申し立てに基づき、労働裁判所の決定を確定、変更、棄却または再審理のために労働裁判所に差し戻すことができます(同条 10 項)。労働上訴審判所は、訴訟が提起されてから 60 日以内に判決を下します(同条 11 項)。

(2) EPZ 労働法

(a) 調停・仲裁手続き

調停・仲裁手続きまで、労働法と同様ですが(124 条 1 項、2 項)、15 日以内に使用者と労働者で和解に至らなかった場合、調停を依頼することができます(126条)。15日以内に調停人による和解が成立しなかった場合、使用者又は団体交渉人は、30 日の事前通知にて、ストライキ又はロックアウトを実施することができます(127 条 1 項)。同通知は、調停人にも送付されるものとし(128 条 1 項)、調停人は、ストライキまたはロックアウトを実施が、法律が定める要件を満たしていると判断した場合(同条(2))、調停を開始します(129 条 1 項)。ストライキ又はロックアウトに記載した期間内に調停による和解に至らなかった場合、調停人は、当事者に対し、仲裁に進むよう説得し、両当事者が仲裁に合意した場合、調停人と当事者が仲裁を請求します(130 条 1 項、 2 項)。労働法と同様に、仲裁に付された場合は、30 日以内に、仲裁人が裁定を下さなければならず(同条 3 項)、裁定は最終的なものとし、上訴はできません(同条 5 項)。

(b) EPZ 労働裁判所による手続き

労働法にて、政府は、EPZ の労使紛争に対応する EPZ 労働裁判所を設立することが出来ると規定されていますが(133 条 1 項)、現時点で設立されておらず、EPZ での労使紛争も、上記の労働裁判所と同様の手続きになると解されます。なお、EPZ 裁判所では、申立てが提起されてから、25 日以内の決定、異議がある場合は、

30 日以内に EPZ 労働上訴審判所に訴訟を提起することができます(135 条 2 項、3 項)。

実務では、労働者が、調停・仲裁手続きを経ずに、労働裁判所に訴える例は少なく、基本的に労働雇用省の傘下の工場・事業所監督局(Department of Inspection for Factories and Establishments(DIFE))に相談し、同局による調停手続の通知が来ることになります。なお、通知が発行されてから会社による受領まで数日要することが多く、通知が来てから、必要書類の提出や聴聞の期日まで準備の余裕がない場合が多くみられます。 労働訴訟は非常に件数が多いにもかかわらず裁判所が少ないこと、当事者の欠席、労働裁判所への出席者の欠席で期日が遅延することから、労働法で定められた期間では終わらないことが課題となっています。