「ベトナムの労務紛争解決手段の概要」

(1) ベトナムの法規制における「労働紛争」の定義と分類

労働紛争とは、労働関係の成立、履行又は終了の際に生じる各当事者間の権利、義務、利益に関する紛争や、各労働者代表組織間の紛争、そして労働関係に直接関連する事態に関わる紛争をいいます。ベトナムの労働法規において、労働紛争は以下の 3 つの類型に分類されています。

  1. 個人労働紛争労働者と使用者、契約により海外へ派遣される労働者と派遣団体、派遣労働者と派遣先使用者との間の紛争
  2. 権利に関する集団的労働紛争

労働者代表組織と使用者、又は労働者代表組織同士の間での、(a)集団労働協約、就業規則、その他使用者と労働者間の合意の解釈や履行に関する意見の相違がある場合、(b)労働法規の解釈や運用に関する意見の相違がある場合、又は(c)使用者の労働者に対する差別、労働者代表組織への干渉や影響、交渉の誠実な遂行に対する違反といった違法行為に起因する場合における紛争

  1. 利益に関する集団的労働紛争

団体交渉の過程で生じる紛争、又は、一方の当事者が交渉を拒否した場合や法定期限内に交渉を行わなかった場合に生じる紛争

(2) 労働紛争の解決手段

① 省レベル人民委員会主席が任命する労働調停人による調停

労働紛争を法的手続により解決しようとする場合、当事者は、まず、労働調停人による調停手続を申し立てなければなりません。但し、以下に該当する場合は、調停手続を申し立てる必要はありません。

・ 懲戒解雇、雇用契約の一方的解除に関する紛争

・ 雇用契約終了時の損害賠償および手当に関する紛争

・ 家事従事者と使用者との間の紛争

なお、家事従事者とは、1 世帯または複数の世帯のために、定期的に仕事(料理、家事、ベビーシッター、

看護、年長者の介護、運転、園芸、その他の家庭のための仕事であって、商業活動に関連しないもの)を行う人のことをいいます。

・ 社会保険、健康保険、失業保険、労働災害保険、職業性疾病保険に関する規定に関する紛争

・ 契約に基づいて海外に派遣された労働者と派遣団体との損害賠償に関する紛争

・ 派遣労働者と派遣先使用者との間の紛争

  1. 省レベル人民委員会主席の決定による多数の委員(最少 15 名)からなる労働仲裁評議会への申立て 労働調停人による調停手続を行なっても関係当事者が紛争に関して相互に合意に達することができない場合、又は労働調停人が調停を行うよう要請を受けた日から 5 営業日以内に調停を開始することができない場合には、労働仲裁評議会による決定を求めることができます。
  2. 人民裁判所を通じた解決

利益に関する集団的労働紛争の場合を除き、当事者は、労働仲裁評議会による解決の代わりとして、又は労働仲裁評議会が定められた期間内に紛争を解決できない場合に、労働紛争について裁判所に訴えを提起することができます。

  1. ストライキの実施

利益に関する集団的労働紛争が、労働調停人又は労働仲裁評議会によっても解決できない場合、労働者はストライキを行うことができます。合法的なストライキは、労働者代表組織によって組織及び主導され、法定の手続に従う必要があります。